TraderJoeの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:CoinDesk

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では、Avalanche上で特にTVLを集めるDEX Trader Joeについてその理解を深めます。後編の本記事では前半に引き続きより詳細にLiquidity Bookの仕組みを解説したのちに、変動手数料の設定などについても理解を深めます。

Liquidity Bookの詳細


引用元:TraderJoe
前編でも述べたように、UniswapV3は指値的であるから、スリッページは存在しないという認識は誤りです。というのもtickspacingの内部では、仮にUniswapV3であってもUniswapV2のように機能するため、スリッページは発生します。つまりtickspacing内ではx*y =kという馴染み深い数式が適用されます。

これはUniswapV3以外の集中流動性を採用するDEXにおいても共通しています。ではTrader Joeではどのように指値的なLiqudity Bookの仕組みを実現するのでしょうか。それはtick spacingの中をx*y = kではなく、x + y = kとすることです。一次式を採用することで、tick spacing内ではトークンxとトークンyが同様の割合で交換されるため、スリッページが生じません。

もっと簡便な表現をすれば、Trader Joeにおいては、tick spacing内がUniswapV2ではなく、Curve financeのように機能していると考えることができます。また注意点ですが、スリッページが生じないというのは、あくまで同一tick内の話であって、価格が別のtickに移行するほど、大きな金額の注文を執行する場合には当然スリッページは発生します。

スワップ手数料の仕組み

さてここからはTrader Joe v2において採用されている変動手数料の仕組みについて理解を深めます。これは従来、Uniswap v3では、0.05%、0.3%、1%という固定手数料が設定されている点を踏まえと大きな違いです。

まずUniswapV3やTrader JoeV2といった集中流動性を採用しているDEXにおいて流動性を提供することは、高い資金効率によるリターンが期待できる一方、そのリスクも高まります。多くのレポートやリサーチによれば、流動制提供者の多くはインパーネントロスの影響により、相対的な損失を被っていることが報告されています。

インパーネントロスとは、LPポジションを構成する2つのトークンの価格比が変化することで発生する相対的損失です。したがってステーブルコイン同士やAVAX-sAVAXという価格の相関性が高いペアでの流動制提供においては、重要ではありませんが、例えばUSDC-AVAXペアでは価格比が大きく変化します。

Trader Joeでは、このようにボラティリティが高い場合には、スワップ手数料も上昇し、低い場合には手数料が低下する仕組みを導入しているのです。この仕組みにより、流動性提供者はインパーマネントロスを軽減することが期待できます。さてここからはその詳細について詳しく解説していきます。まずTrader JoeV2においてスワップ手数料は基本手数料と変動手数料で構成されます。またこの変動手数料は、新たに導入されたボラティリティを計測するボラティリティ・アキュムレータと呼ばれる変数に基づいて、より望ましい手数料の徴収を可能にします。

ボラティリティ・アキュムレータとは

ボラティリティは、時間の経過とともにどれくらい価格ビンが跨がれたのかと言う点から計測します。具体的にはスワップが行われる際に、その取引がいくつのビンをまたぐのか、そして最後のスワップからどのくらい時間が経過したのかを追跡することによって、市場のボラティリティを測定する方法です。

つまり価格ビンを跨ぐようなスワップが短期間に連続して行われた場合、この数値が上昇します。取引の動きが鈍くなる場合には、数値が減衰し始め、特定の時間枠の間にスワップが発生しない場合はリセットされます。この仕組みはLPのインパーマネントロスを和らげる働きがあるわけですが、LPにとっては単に値動きが発生しないことが理想的ではありません。

というのも一般的に値動きが発生していないということは、取引高も低下することが想定されます。この場合にはLPが得られる手数料報酬も減少してしまうのです。したがって、もっとも望まれるのは、価格変動が起きないことではなく、自らが提供している流動性の範囲内で価格変動は発生するが、LP解体時には、LPを提供した時の価格と同様であることです。

先ほどの解説したボラティリティ・アキュムレータはこの点についても捕捉することが可能となっています。具体的には、基準となる期間に基づいて、価格がより一方方向に変動し続けた場合、変動手数料が上昇し、価格幅が縮小した場合には、変動手数料が減少する仕組みを採用しています。このことは、無理やり価格を操作することにより、変動手数料の水準を不正に操作することを防止することにも一役買っています。

流動性ポジションの表現にERC1155を採用


引用元:Delphi Digital
さて、最後にUniswapV3とTrader JoeV2の比較としてややテクニカルな要素の説明をして、本記事を終わりとします。UniswapV3とTrader Joeの最後の大きな違いとして流動性ポジションがERC721で表現されるか、ERC1155で表現されるかという点があります。

これまでUniswapV3をはじめとする多くの集中流動性DEXはERC721、つまりNFTを採用してきたのです。これにより各ユーザーの流動性提供のポジションがNFTで表現されてきました。これはComposabityを強みとするAMMとやや相性が悪い結果をもたらします。昨今では、AMM上でオプションを蘇生するプロダクトなどもありますが、ERC721で流動性ポジションが表現されていると、そのポジション自体を例えば貸し借りする必要が生じます。

つまり、1000-1100というレンジに提供されている流動性を用いて何らかの操作をしたいとしても、多くのユーザーが1000-1200の範囲で提供していた場合、この1000-1200のポジション自体を操作する必要があります。一方ERC1155ではtickごとにポジションの管理が可能となるので先のような問題は生じません。

実際に今後ローンチされるUniswapV4ではERC1155が採用される予定となっています。もちろんただERC1155では、すべてのtickに操作が必要となるため、ガス代が高くなる傾向にあることを付け加えておきます。Trader Joeでは、このERC1155を実装しているので、多くのDappはよりTrader Joe上に展開しやすくなることも期待できます。今回はの記事は以上となります。

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