Ambient Financeの理解を深める 前編

サムネイルの引用元:Ambient Finance

はじめに

本記事では、UniswapやCurveなどに対抗する新しい分散型取引所のAmbient Financeについて解説します。Ambient Financeは、Ethereumの他にScrollやCantoで稼働していますが、EthereumのLayer2 Blastに展開したことで、大きくTVLを伸ばした経緯があります。

Blast自体は、早期からエアドロップを明言するなど、投機的な側面を全面に出したマーケティングにその妙がありますが、Ambient Finance自体は、AMMの仕組みに高い優位性を誇ります。例えばUniswapV4の導入される予定である 仕様、シングルトンやJust in time liquidityを防ぐためのホワイトリストの導入などはAmbient Financeがいち早く分析、取り組みを重ねたものです。

また早期からDEXの課題点に関する記事を多数まとめ上げたAmbient FinanceのチームはDEXの領域において、極めて高いレピュテーションを獲得しています。そんなAmbient Financeについて、本記事では、AMMの基礎的な事項や課題点などを踏まえながらその特徴や仕組みついて詳しく解説します。

AMMの基礎事項


引用元:pintail
AMMはいわゆるDEXの仕組みとしてUniswapやCurveといった大手のDEXに導入されることで、成功を収め、現在では多くのDEXが、仕組みは異なれどCFMM(Constant Fuctioal Market Maker)を使用しています。ここからは、AMMの仕様を簡単におさらいすると、x*y = kという式に基づいて、流動性提供者が多くの場合、2種類のトークンをDEXのプールに預け、その流動性をトレーダーが利用することで交換が成立します。

取引レートはトークン同士の比率、基本的にはy/xで表現され、流動性提供者は、トレーダーが支払う手数料をインセンティブとして流動性を提供します。それまで特にEthereumなどのブロックチェーン上の取引所では、流動性の低さやガス制約などから板取引といった既存金融で利用される手法には限界がありました。その一方で、先の問題を解決したAMMは、UniswapやCurveなどの大成功により、数兆ドルを超える取引量を実現してきました。

しかしながら、DEX市場が成熟するにつれて、重大な課題が持ち上がるようになったのです。それはAMMという仕組みが長期的に持続可能であるのかという点についてです。先ほど流動性提供において、トレーダーから得る取引手数料が流動性を提供するインセンティブとなると説明しました。しかしながら現状多くの流動性提供者にとっては、利益(取引手数料)よりもコスト(インパーマネントロス)の方が大きくなっています。インパーマネントロスとは、流動性を提供する代わりに資産を直接保有することによって失われる機会のことです。

インパーマネントロスは、プールされたトークン(預け入れられたLPトークン)の価格が変動すると発生します。基本的にAMMの取引手数料はスプレッドとして機能します。しかしながらUniswapなどを大手DEXは、取引手数料をプールごとに固定しているため、相場状況に応じた適切な取引手数料をトレーダーに課せていないという課題があるのです。

Ambient Financeの特徴① : シングルトン


引用元:YBB
Ambient Financeは、単一のスマートコントラクト内で動作するシングルトンAMMであり、スワップ取引の動作をより効率的にしています。単一のスマートコントラクトを使用することで、トレーダーと最終的にはLPに大きな利点がもたらされます。具体的には、シングルトンは、単一のコントラクトで複数のプールを展開することを可能にするもので、複数のプールにまたがるスワップ取引などにおいてガス代を削減することが可能となります。

実際にUniswapやSushiswapなどでは、トークンペアを新たに上場させるごとに、それぞれ1つのプールコントラクトを作成する必要がありました。一方Ambient Financeでは複数のプールを1つのコントラクトで展開することができます。

Ambient Financeの特徴② 多様な流動性提供手法


引用元:Ambient Finance
Ambient Financeでは、集中流動性、全体流動性、およびノックアウト流動性という流動性提供手法をすべて単一の流動性曲線上に組み合わせます。集中流動性とはその名の通り、UniswapV3などで使用されている流動性を提供する範囲を特定して資産を預け入れる方法です。2つ目の全体流動性とはUniswapV2などで採用されている全範囲に流動性を提供する方法です。最後はノックアウト流動性と呼ばれる手法です。

これは板取引における指値注文とほぼ同等の機能を提供します。集中流動性と全体流動性に関しては、周知の事実であると思いますので、ここではこのノックアウト流動性ついて詳しく解説します。ノックアウト流動性は極めて狭い範囲に指値注文のように流動性を提供します。価格が当該のレンジを完全に通過した場合にポジションをロックします。この場合に注文は約定され、ノックアウト流動性として提供された流動性は、提供したトークンから対応するトークンへと転換されます。UniswapV3における流動性提供は指値注文に似てはいるものの、仮に価格が上昇し、再度下落した場合にトークンは瞬間的に対応するトークンに転換されるだけ留まります。

また追記事項として、価格が現在レンジの中央にある場合、ノックアウト注文を部分的に約定することが可能になります。ユーザーがノックアウト流動性を削除すると、転換されたトークンと残りの未転換のトークンの双方を取得します。また指値注文ではありますが、流動性提供であるため、価格範囲内のノックアウト流動性はトレーダーが支払う取引手数料を受け取ることができます。これは、板取引におけるメーカー リベートに相当するとも考えることができます。

まとめ

以上がAmbient Financeの理解を深める記事の前編となります。後編では、上段で述べたAMMの持続的稼働について詳しく解説を展開し、Ambient Financeがそれらの問題にどのように取り組んでいるかについて理解を深めます。

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