Aerodrome Financeの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Coin Market Cap

はじめに

本記事ではEthereumのLayer2 Baseでサービスを展開する分散型取引所のAerodrome Financeついて解説します。前編ではトークンペアに応じたAMMモデルの設定やve(3,3)の仕組みを中心にAerodrome Financeが備える機能の概要を中心に解説してきました。後編では前編で解説した仕組みを具体的にAerodrome Financeに当てはめながら、より詳細な解説をおこないます。

veAERO NFTsとAerodromeのガバナンスシステム


引用元:Aerodrome
Aerodrome Financeのガバナンスシステムの中核を成すのが、veAERO(vote-escrowed AERO)NFTsです。これはCurve Financeで先駆的に導入されたveTokenモデルを基に設計されており、プロトコルの持続可能な成長と、ユーザーの長期的なコミットメントを促進する上で重要な役割を果たしています。

veAERO NFTsの取得方法と特徴

veAERO NFTsは、AEROトークンを一定期間(最長4年)ロックすることで取得できます。このロック期間は、veAERO NFTの保有者が得る投票力と直接的に関連しています。具体的には、ロック期間が長ければ長いほど、より大きな投票力が付与されます。この仕組みは、ユーザーに長期的な視点でプロトコルに関与することを促し、短期的な利益追求よりも、Aerodromeエコシステム全体の持続的な発展に焦点を当てるよう設計されています。

veAERO NFTsの主要機能

1点目はガバナンス投票権です。veAERO NFTの保有者は、Aerodromeプロトコルの重要な決定に対する投票権を持ちます。これには、プロトコルのアップグレード、パラメータの調整、新機能の導入など、幅広い事項が含まれます。投票力は保有するveAERO NFTの量に比例し、より多くのAEROをより長期間ロックしているユーザーほど、大きな投票力を持つことになります。

2点目はAERO排出割当の決定権です。veAERO NFT保有者の最も重要な権限の一つが、異なる流動性プール間でのAERO排出の配分を決定する権利です。この機能は、Aerodromeのトークノミクスと流動性インセンティブ構造の中核を成しています。

動的報酬分配システム

Aerodromeの流動性と報酬システムは、veAERO NFTを中心とした動的な報酬分配メカニズムによって支えられています。このシステムは、プラットフォームの持続可能性と成長を促進する上で極めて重要な役割を果たしています。

1点目は週次投票システムです。veAERO NFT保有者は毎週、どの流動性プールにより多くのAERO排出を割り当てるかを投票します。この週次の投票サイクルにより、市場の需要やトレンドの変化に迅速に対応することが可能となります。

2点目は市場需要との連動です。投票システムは、需要の高いプールにより多くの流動性が集まるよう設計されています。veAERO保有者が特定のプールに多くの票を投じると、そのプールへのAERO排出量が増加し、結果としてより多くの流動性提供者を引き付けることになります。この仕組みにより、市場の需要と流動性の供給が効率的にマッチングされます。

3点目は取引手数料の分配です。Aerodrome上で生成される取引手数料の100%がveAERO保有者に分配されます。この仕組みは、長期的なステークホルダーに対する強力なインセンティブとして機能し、プロトコルの成長とveAERO NFTの価値向上の間に正のフィードバックループを形成するでしょう。

Aerodromeのveαerο NFTを中心としたガバナンスと報酬システムは、単なるトークン保有者への権限付与を超えた、新しいインセンティブモデルを提示しています。このシステムは、プロトコルの持続的な成長、効率的な資源配分、そしてユーザーの長期的なコミットメントを巧みに結びつけ、DEXプロトコルの次世代モデルとして注目を集めています。

Aero Fedシステム

Aero Fedシステムは、Aerodrome Financeのユニークなガバナンスメカニズムの一つであり、プロトコルの経済政策に対するコミュニティの直接的な関与を可能にします。このシステムは、伝統的な中央銀行の機能をDeFiプロトコルに適用したものと考えることができます。

Aero Fedシステムは、プラットフォームのトークン排出量が一定のレベルまで低下した際に発動される特別な投票メカニズムです。この排出量の低下は、プロトコルの成長や利用状況に応じて自然に発生するものです。排出量が設定された閾値に達すると、veAEROトークンの保有者たちが、プロトコルの将来のトークン排出政策を変更することができます。
この投票では、veAERO保有者たちは主に3つの選択肢から一つを選ぶことができます。一つ目は排出率の増加です。これは、より多くのAEROトークンを市場に供給することで、流動性提供者やユーザーへのインセンティブを強化する効果があります。二つ目は排出率の減少で、これはトークンの希少性を高め、潜在的にその価値を上昇させる可能性があります。そして三つ目は現状維持で、現在の経済状態が適切だと判断される場合に選択されます。

Aero Fedシステムの主な目的は、コミュニティにプロトコルの経済的側面への直接的な関与を可能にすることです。これにより、中央集権的な意思決定ではなく、実際のユーザーや関わりのあるステークホルダーたちが、プロトコルの将来の方向性を決定することができます。この仕組みは、プロトコルの持続可能な成長を促進するだけでなく、コミュニティの意見を尊重し、それを実際の政策に反映させることで、より民主的で透明性の高いガバナンスを実現します。

さらに、Aero Fedシステムは、市場の状況や外部環境の変化に応じて、プロトコルの経済政策を柔軟に調整することを可能にします。例えば、DeFi市場全体が低迷している時期には、排出率を増加させてユーザー参加のインセンティブを高めることができます。逆に、市場が活況を呈している時期には、排出率を減少させてトークンの価値を保護することも可能です。

このように、Aero Fedシステムは、単なる投票システムではなく、Aerodrome Financeのエコシステム全体の健全性と持続可能性を維持するための重要なツールとして機能します。それは、コミュニティの集合知を活用し、市場の動向に迅速に対応できる適応力のあるプロトコルを実現する上で、中心的な役割を果たしているのです。

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