dYdXの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:dYdX

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では、分散型取引所の一角で、オーダブック方式を採用する暗号資産トレーディングプラットフォームであるdYdXについて解説します。前回の前編では、dYdXの解説というよりレバレッジ取引やそれに伴う清算、また無期限先物取引の仕様など、一般的なトレーディングサービスの仕組みについて理解を深めました。後編の今回は、dYdXのより細かな仕組みや特徴について概観し、深堀します。本記事は、前後編とありますので、前編をご覧になる方は、こちらから参照お願いします。

dYdXの概要


引用元:StarkEx Process Flow
さてここからは、dYdXの詳細について解説をしますが、dYdXでは、現在V4のローンチが発表されています。dYdX V4ではCosmos SDKとTendermint PoSに基づいて、Cosmosエコシステム上に独自チェーンとして展開することが予定されています。これまでdYdXは、V1がEthereumチェーンで稼働したのを皮切りに、Starknetなどを展開してきたStarkWareが提供するStarkExを利用して運営がなされてきましたが、独自チェーンを構築するというのは大きな変更といえるでしょう。そもそもdYdXがEthereumからStarkExを利用するに至った経緯としては、Ethereumの最大の問題であるガス代の高騰と取引速度の遅さによるものでした。そして今回dYdXがCosmosエコシステム上で、独自チェーンを展開する理由としては、完全な分散化がその目的として挙げられます。まずdYdXはオーダーブック方式を採用しており、そのマッチングエンジンにはオフチェーンのものを使用するというハイブリット方式となっています。マッチングエンジンというのは、売り手と買い手の売買希望価格でマッチングさせて、取引を促進することに用いられるものです。従来の金融市場において、オーダーブック方式というのは非常に一般的で、多くの証券取引所が採用している仕組みです。一方、暗号資産市場においては、ロングテール、つまりボラティリティが極めて高いトークンを扱わなければならないほか、オーダーブックをブロックチェーン上で再現するというのは、ガス代などを考慮に入れると困難です。

よってAutomated-Market-Maker、AMMをUniswapやCurveといった大手のDEXは、採用しています。dYdXでは、上記のマッチングエンジンを採用して、1秒で、およそ500件、1日あたりに換算して、数千万件の注文を執行することができるようになりました。もちろんV3まででも分散型の暗号資産取引所として、地位を築いてきたdYdXですが、完全な分散化を達成する上で、マッチングエンジンの改善は急務と言えます。したがってV4においてCosmosエコシステムに移行し、Validatorネットワークが管理する分散型オーダーブックを構築し、集権化のデメリットを解消しつつ、迅速な注文とマッチングが可能になることは、大変意義深いものです。さらに、先に発行されたdYdXガバナンストークンがレイヤー1ネットワークのネイティブトークンの役割を担うことができ、独自のPOSコンセンサスメカニズムで利用する場合に不足していたユーティリティや売り圧力の解決策を提案するものといえるでしょう。

また、アプリチェーンを採用したオーダーブックに基づく分散型デリバティブ取引所の実現という流れは、そもそもdYdXに限ったことでは、ありません。同じく、Cosmosエコシステム上で展開をしているInjective Protocolの場合、2021年11月のメインネットローンチ時に、Injective Chain上でアプリチェーンによるオーダーブック方式が採用されています。(ただ現在、Injective ChainのDappエコシステムの拡大に伴い、アプリチェーンのオーダーブックはHelixという名称で運営されています。)

また、現物とデリバティブの両者を取り扱う取引所を長らく開発してきたVega Protocolも、金融分野においての活用が期待され、その集めているSei Networkも、Cosmosベースのアプリチェーンオーダーブックが用いられています。もちろん各プロトコルによって分散型やオンチェーン型のオーダーブックの実現方法は異なりますが、先に述べたように一般的にオーダーブックでの注文処理にはAMMよりも高度な計算能力が要求され、特にマーケットメイクの場合は高いスケーラビリティが要求されるため、独立したアプリチェーンで全てのリソースを占有するという方向性は、当然と考えられながらも、非常に有効的なものであると結論づけることができるでしょう。

dYdXトークンの利用

さて、ここからはdYdXトークンの用途について理解をしておきましょう。dYdXトークンは、dYdXでトレードすると手数料と建玉の割合に応じて、報酬がもらえると仕組みになっています。また、dYdX自体のステーキングやUSDCのステーキングによってdYdXトークンを受け取ることが出来ます。一方このdYdXトークンはdYdX Foundationによって発行されていることを確認してください。dYdX Foudationは、2021年にdYdx Trading社によって設立された組織で、先に述べたガバナンストークンであるdYdXの発行やトレジャリーの管理、コミュニティ運営などを担っています。dYdX Foudationはあくまで、非営利組織であってトレードサービスの提供や具体的な取引所は、dYdx Trading社によって執行されるものです。

まとめ

本記事では、前編に引き続いて分散型取引所の一角であるdYdXについて解説し、その理解を深めてきました。dYdXは、前編で申し上げた通り、レバレッジ取引や永久無期限先物取引といったデリバティブを中心に提供するトレーディングプラット付フォームです。dYdXは、オーダーブックとオフチェーンのマッチングエンジンを採用することで、従来のAMMとは一線を画するUIUXを提供しており、暗号資産限らない集権的な取引所に近いものとなっています。V4では完全な分散化に向けてCosmosネットワークにおいて独自のL1アプリチェーンを構築することが予定されており、さらなる進化に目が離せません。また、先物取引を提供するプロダクトも競争が激しさを増しており、流動性提供者をカウンターパーティとし、Chainlinkオラクルを採用するGMXなどは、今やdYdXを凌ぐ取引所として、急成長を遂げています。その他にもGains NetworkやLevel Financeなども同じく台頭を遂げています。切磋琢磨の中でさらなるdYdXの進化に期待が掛かると考えます。

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