Lybra Financeの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:@elhadi1.dev

はじめに

本記事では、暗号資産担保型ステーブルコイン、特にLST(Liquid Staking Token)担保型ステーブルコインであるeUSDとその発行体のLybra Financeについてその理解を深めます。前編では、法定通貨担保型、暗号資産担保型といったように、各種ステーブルコインについて理解を深め、さらにはLSTについて簡単に振り返ったのちにLybra Finance、eUSDについてその概要を解説しました。後編の本記事では、Lybra Financeについてより詳細な解説を行い、理解を深めます。

Liquid Staking Tokenを担保化するにあたっての課題


引用元:messari

前編でLSTに関して簡単に解説しましたが、LSTを担保化する場合に、リベース型LSTと非リベース型LSTの両方に対応することが、まず必要です。これはstETH、cbETH、fraxETHというLSTの発行主体による違いではなく、stETHとwstETH、fraxETHとsfraxETHというリベースの方式による違いです。stETHとwstETHを例にその相違を理解します。

LSTトークンは、LSTトークン自体を保有することで、staking rewardの恩恵に預かることが出来ます。しかしそもそもこのstaking rewardの恩恵の受け方がstETHとwstETHでは異なるのです。具体的には、リベース型であるstETHの場合、stETHを保有しているだけで、stETHの枚数自体が増えます。つまりstETHを100単位保有していて、stETHを保有することによる年利が4%であるのならば、104枚のstETHを1年後に獲得することができるのです。

一方、非リベース型であるwstETHの場合、staking rewardの反映方法は、トークンの価値自体が上昇します。つまり先ほどの例に倣うと100枚のwstETHを保有していた場合、1年後にwstETHの枚数自体は変化しませんが、wstETH自体の価値が変動します。つまりwstETHの価格が現在1000ドルであった場合、1年後には、1040ドルになります。したがって各種DEXを確認していただければわかりますが、stETHの価格はETHにほぼペッグしている一方で、wstETHは、rewardが価値に反映されるため、大きく上方向に乖離しています。リベース型と非リベース型の両方が混在する理由は、多くのapplicationが、現状このリベース型の仕組みに対応できていないからです。

Lybra Financeの対応


引用元:Lybra Finance
さて、先ほどはLSTを取り扱う上での課題について解説しましたが、Lybra Financeにおける対応を理解したいと思います。Lybra Financeでは、さまざまなLSTに対応するために各LSTごとに異なるVaultを用意しています。仮にLidoが発行するstETHを例にするなら、1 つはリベース LSTつまり、stETH用のvault、もう 1 つは非リベース LST 、つまりwstETH用のvaultです。実際にこれらvaultごとに、異なる最低担保比率が設定されています。

リベース LST stablecoin eUSD

リベースLSTを使用した場合にはeUSDを発行することができます。またeUSDのホルダーは、eUSDを保有するだけでおよそ8%の利回りを獲得することが出来ます。またLybra Financeではv2の開発に伴って、Rocket Pool のrETH、BinanceのwbETH、SwellのswETHなどのさまざまな LST を担保にして、eUSDを発行することが出来ます。以下では具体的な発行のプロセスについて、簡単に説明します。まずユーザーは、stETHなどのリベース LST をデポジットします。発行に関しては、その担保比率が150%を超えていれば、ユーザーは鋳造コストなしで担保資産に対してeUSD を鋳造できます。

そして先にも述べたように、eUSD 保有者は、およそAPY 8%の利回りを毎日獲得することができます。eUSDを返済し、担保であるリベーストークンを取得するためには、担保比率が少なくとも150% という担保比率 を超えている限りにおいて、いつでも担保を引き出すことができます。またeUSD保有者は、基礎となるeUSDの利回りを維持しながら、eUSDを1:1の比率でpeUSDに変換できます。続いては今登場したpeUSDについて以下で解説を加えます。

非リベース LST stablecoin peUSD

Lybra FinanceではpeUSD (Pegged eUSD)と呼ばれるステーブルコインも存在します。まずpeUSDの主な利用手法としてEthereum mainnetに存在するeUSD をArbitrumなどL2でも利用できるよう変換したものがpeUSDです。また、peUSDは先ほど紹介した非リベース LSTを元に発行されるため、貸し出し、借り入れ、他の資産との交換など幅広いDeFアプリケーションで活用することが可能となります。

それでは、非リベース LST を使用して peUSD をミントする方法について先ほどのように詳しく解説します。まずは、発行でユーザーは、Ethereum mainnet上の非リベース LST 担保に対して peUSDを発行することができます。発行には150%を超える担保比率が必要です。 peUSD は、eUSDと比較して、スワップ、取引、貸し出し、借り入れ、流動性の提供など、さまざまに利用可能です。次に担保の返済です。ユーザーはいつでも任意にpeUSDの負債を返済できます。またユーザーが借りた peUSDの金額に基づいて、1.5% の借入 APY が返済時に請求されます。

eUSDのペッグメカニズム

eUSDの安定性は、超過担保、清算メカニズム、裁定取引の機会というこの3要素が鍵となります。この点は多くの暗号資産担保型ステーブルコインと変わりませんが、簡単に最後に確認します。まずは過剰担保です。各1eUSD は少なくとも 1.5ドル相当の LST を担保として裏付けられています。過剰担保は、基礎となる担保の価値が発行された eUSD の価値よりも大きくなるようにすることで、安定性を維持するのに役立ちます。もちろん資金効率の相対的な低さというのは、他のステーブルコインと比較すれば残ります。2点目は清算のメカニズムです。

Lybra Financeでは、担保不足のポジションから不良債権化のリスクを低減するために、清算が行われる場合があります。ユーザーの担保率が、求められる担保率を下回った場合、任意のユーザーがその担保を清算することができます。3点目は、裁定取引の機会です。eUSDの価格が 1ドルのペッグから逸脱すると、裁定取引の機会が生じます。ユーザーはこれらの価格差を利用して利益を上げ、eUSD 価格を意図した価値に戻すことができます。そのほかにもプレミアムの抑制機能やスタビリティファンド昨日も備えており、ペッグに対してより強固な機能を備えます。

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