MEV (Maximal Extractable Value) とは?

ブロックチェーン、特にスマートコントラクトが利用できDeFiの活用が盛んなチェーンでは、ブロックチェーンのグローバルステートから完全に無料でおカネ(トークン)を得られることがあり、これはMEVと呼ばれます。

この記事ではMEVとは何かを深掘りし、現在のMEVエコシステムの状態をMEVの初心者向けに解説します。

MEV とは?

MEV とはブロック生成者、具体的には PoW チェーンの場合にはマイナー(採掘者)、PoS チェーンの場合にはバリデータ(検証者)がブロック生成権を握った際に、ブロックに対して任意にトランザクションを追加、削除、または順序の入れ替えなどをすることで得ることができる金銭的価値を表します。

より具体的には、最も一般的なものはアービトラージであり、複数のDEX間でトークンの価格差が生じた際にアービトラージのトランザクションをブロックに挿入することで完全にリスクフリーでトークンを得ることができます。

これはいわゆる「落ちてるカネを拾う」という行為であり、誰でも実行可能なため、最も素早くトランザクションを承認させた者だけが得られるリスクフリーな金銭的価値となります。

早いもの勝ちとなりますので、ブロック生成者でなくともアービトラージのトランザクションをメモリプールに対して投げることはできるのですが、ブロック生成者はそのようなアービトラージのトランザクションをあえて無視し、自身のアービトラージトランザクションを恣意的にブロックに挿入することで自身の収益を最大化することができます。

そのため、原理的には「早いもの勝ち」であるものの、実際にはブロック生成者のみが得ることができる固有の利益と考えることができます。

Ethereum が PoW を採用していた頃は MEV は Miner Extractable Value の略だと言われていましたが、PoS に移行してからは Maximal Extractable Value と言われるようになりました。

MEV の実例

MEV として抽出 (extract) 可能な金銭的価値の例をいくつか見ていきます。

DEX間アービトラージ

すでに述べましたが、最も単純かつ一般的な MEV の例は複数の DEX 間(またはしばしばCEX-DEX間)でのアービトラージとなります。

DEXではトークンを売買すると、売買した数量に応じて(AMM の constant product または StableSwap 公式などに応じて)トークンの価格が上下します。

そうすると、誰かがトークンのスワップを行うと自然にDEX間でトークンの価格差が生じることとなりますので、価格の安いDEXでトークンを購入し、価格の高いDEXでトークンを売却することでリスクフリーで金銭的価値を得られます。

レンディングプロトコルにおける清算

Aave などのレンディングプロトコルでは、トークンを借り入れした場合には担保として入れたトークンに担保掛値を乗じたものと、借り入れたトークンの時価を比較して health factor (健康度) が常に計算されています。

Health factor が 1 を下回ると、担保不足となり清算の対象になります。

Health factor が 1 を下回る原因としては、担保トークンの価格下落、借り入れトークンの価格上昇、借り入れによる利子による借入額の増加などが考えられます。

CeFi では清算の対象となった場合には、マージンコールと言って、貸し手の事業者が清算を行うことになります(例えば Fintertech のデジタルアセット担保ローンなど)が、DeFiでは価格オラクルの値が変化したとしても自動的に清算を執行することは基本的にはできませんので、清算を行うためには清算用のトランザクションを投げる必要があり、清算者は報酬として精算額の一定割合をもらえることが一般的です。

このように清算の対象になると、清算ボット (liquidation bot) が自動的に health factor の悪化した債務 (obligation) を清算することになりますが、清算という行為は誰でもできる(※プロトコルによっては許可制になっているところもあります)ため、MEVの対象となります。

サンドイッチ攻撃

少しマニアックな例としてはサンドイッチ攻撃があります。

これは、DEXでのスワップのトランザクションが投げられた際に、そのトランザクションよりも先回りして先にDEXでトークンを買い上げ、オリジナルのトランザクションが執行された後に売り戻すことで、市場価格よりもわずかに高い値段でトークンを売却できるというものです。

このように未執行の注文を見て先回りして注文を出すというのは伝統金融でもある行為であり、フロントランニングと呼ばれています。

フロントランニングが行われると、オリジナルの注文者は市場価格よりもわずかに高い値段で金融商品を買わされる(=スリッページ)ことになりますので、利益の源泉はオリジナルの注文者のスリッページ分となります。

DEXでの注文の際にスリッページ許容額 (slippage tolerance) を指定することができますので、MEV抽出者が得ることができる利益の範囲はこのスリッページ許容額に限定されますが、注文数量が少ない場合にはトランザクション手数料や先回り注文の取引手数料などを考えると赤字になる可能性がありますので、主に大きいロットサイズの注文が犠牲者となる傾向にあります。

ちなみに、プログラムの作成ミスでスリッページ許容額を設定し忘れてトランザクションが投げられることが稀にあるのですが、その際にはトークンをフラッシュローンなどで大量に借り入れて価格を一時的に大幅にパンプ(例えば100倍など)し、オリジナルの注文者に100倍の価格で買わせた後にフラッシュローンで借り入れたトークンを買い戻すなどの攻撃ができてしまい、この場合には犠牲者はスワップしようとした資産のほぼすべてを失うこととなりますので注意が必要です。

より高度なMEV戦略

サーチャー

上記の MEV 戦略は比較的一般的なものですが、特殊なトランザクションに対して実行できる特殊なストラテジーなど、MEV の抽出可能性は無限大です。

MEV を実行できるのは基本的にブロック生成者となりますが、ブロック生成者がそのような多様な MEV 戦略を自身で実装し、実行するのは困難です。

そのため、MEV を実際に実行するブロック生成者と、MEV 戦略を考える者(「サーチャー」という)の分離が図られています。

MEV インフラストラクチャー

MEV を実行できるブロック生成者に対して、サーチャーが実際の MEV トランザクションを提案するためのインフラストラクチャーが必要となります。

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