Celsiusの出金停止と他のCeFi動向

こんにちは、デフィー捌号です。

6月13日に最大手のCeFiであるCelsius Networkが預入資産の引き出し、スワップ、アカウント間の送金を停止して以降、ベア相場であることや3AC問題などもありCeFiに対する不安が強くなっているので、それに関してまとめました。

用語集

CeFi
投資家のお金を集め、中央集権的に運用するサービス
複雑なDeFiサービスを理解したプロが運用を行ってくれるので、自ら運用するより高い利率を簡単に実現できるという利点がある。

Celsius Network
CeFiの最大手のうちの一つ。

Three Arrows Capital(3AC)
暗号資産(仮想通貨)市場専門のVCでは最大手のうちの一つ。多くの有名プロジェクトに出資を行ってきた。

Lido
ETHを預けることで、PoSによるマイニング報酬で年利4%を実現してくれるサービス。報酬の源泉が非常に硬いので人気がある。ETHを預け入れると、預かり証としてstETHを1:1の割合でもらえるがLido上でstETHをETHに1:1の割合で戻すことが現状できないのが問題点。

Aave
暗号資産同士のレンディングプラットフォーム。LidoにETHを預けた証であるstETHを担保に他の暗号資産を借り入れることができるところが利点。

Curve
ステーブルコイン同士など、価格が同じくらいの通貨のスワップを主に扱うDex。非常に高い流動性があり、stETHをETHに戻すときの手段として使われる。

USTのデペグ
当時Bitcoin、Ethereumについで三番目のTVLを誇っていたTerraチェーン上のステーブルコイン。UST建てで年利約20%のレンディングサービスがあり人気があった。しかし、先日匿名の攻撃者によって、USTのドルペグが外れ、暗号資産市場に非常に大きい衝撃を与えた。

Alameda Research
暗号資産市場において非常に大きい影響力を持つファンド。FTXやSolanaにも影響力がある。最近の事件には大体Alamedaが絡んでいる。

stETH
LidoにETHをステーキングした際にもらえるERC-20規格のトークン。AaveやCurve、MakerDAOなどで使えるので非常に高いユーティリティを持つ。

Avalanche
イーサリアムなどと同じL1チェーンに属するチェーン。独自のコンセンサスアルコリズムと、subnetという概念で注目されている。

Near
L1チェーンのうちの一つ。イーサリアムが目指すDank Shardingを先に実装しており、Shardingに関してはイーサリアムの少し先にいるので注目をされている。

Starknet
イーサリアムのL2チェーン。zk-STARKという2018年に発明されたばかりの技術をもちいて、スケーラビリティ解決のため開発を行っている。

Trader Joe
Avalanche上の最大級のDex。

Celsiusの出金停止について

今回の問題は、まずCelsiusがLido、Aaveの二つのプロトコルを使って信用創造を行い、資産運用をしていたことに起因します。詳しく説明をすると、まずCelsiusはLidoに持っているETHをLidoに預けることで、Lidoから4%のステーキング報酬とstETHをもらいます。これのstETHを担保にAaveでETHを借り入れます。この借り入れた資産をもう一度Lidoにステーキングを行います。これにより少ない資産で多くのステーキング報酬をLidoから受けることができます。しかし、これらのプロトコルを使っているCelsiusは投資家に返却するための十分なETHの現物をもっておらず、投資家がお金を引き出したい場合、保有しているstETHを売却してETHに変える必要がありました。

ちょうどこのころはUSTのデペグとクリプトウィンターで市場には不信感が流れており、そんな中で諸説あるのですが、Alameda ResearchがCurve上で大量にstETHを売り、ETHとstETHに微妙な価格差を付けました。このわずかなデペグはUSTの記憶が新しい投資家の不安を刺激し、stETHで運用を行っているCelsiusから引き出したいという需要が高まりました。

これによって、CelsiusはETHを用意する必要があるのですが、手元にはないので自ら保有しているstETHを売却し、ETHを手にする必要があります。
彼らはCurve上でstETHを売却し、投資家にお金を返すという行為を行っていましたが、これはstETHのデペグをさらに加速させました。stETHのデペグがCelsiusによって引き起こされるので、余計に投資家は不安を覚えて、さらにCelsiusから引き出そうとして、さらにデペグが進むという負のスパイラルのはじまりです。

諸説はあって、Alameda Researchはこれによって、安くstETHを集めようとしているのではないかというものもあります。

しかし、これではCelsiusも投資家も暗号資産市場も誰も得をしないので、強制的に出金を停止したという形になります。

3AC問題

次にThree Arrows Capitalの損失が問題になります。

3ACは暗号資産市場における最大手のVCになります。彼らはAvalancheやNear, StarknetなどのチェーンからAaveやTrader Joeなどの大規模なプロジェクトにまで出資をしてきました。

ただ、そんな3ACは先日のUSTの崩壊により大きな損失を作ってしまいます。彼らは他のCeFiや他の金融機関からお金を借りて投資を行っていたので、利子を払う必要があります。そこで彼らはAaveなどのレンディングプラットフォームでより高いレバレッジをかけて運用(Celsiusが行っていたようにLidoとAaveのグルグル戦略をより多く回してステーキング報酬をより多く得ること)することが必要になりました。しかし、Aaveなどのレンディングプラットフォームでは過剰担保を求めます。Aaveで多くの借り入れをする場合、借り入れのための担保の価値が下がったときそれを補填するためにさらなる担保をいれないと自動で清算されてしまいます。ETHの価格の下落と、大きな借り入れを行っていた3ACはAaveにおけるポジションを少し解消する必要がありました。CeFiや金融機関からは返済を求められ、レンディングプラットフォームでは担保を追加するか清算を行うか迫られた3ACは窮地に立たされることになるでしょう。(個人的な感想)

現状

Ethereumに次ぐTVLを誇っていたTerra USTの崩壊とそれに続くクリプトウィンター、また、これらによって引き起こされる3ACの倒産や、Celsiusの出金停止は暗号資産市場に大きな衝撃を与えることになりました。
以下筆者の考察になりますが、これらの事件によって、市場には不安が生まれ、中央集権的に自分の資産を管理されてしまうCeFiには特に不安が集まっているのだと思います。
そもそもこの冬では相当優秀な人でも運用するのが難しいのに、それだけでなく自分の資産を思うように動かせなくなる可能性のあるCeFiに預けたい人は少ないでしょう。
多くのCeFiが年利15%以上をうたっており、おそらくLidoとAaveを使ったグルグル戦略や、USTを使った年利20%の恩恵、3ACなどのクリプトVCへの出資を行っていると考えられ、これらの事件で何かしらの損失を被っていると考えられます。

以下、Celsius以外の主要なCeFiの声明に関してまとめておきます。

Nexo

3ACとの関わりは一切なく、安全な運用を行っています。ソース

BlockFi

大口の顧客の清算を行ったそうです。(たぶん3AC)ソース
6/21現在:
BlockFiはFTXから$250Mの救済を受けたそうです。ソース

Genesis

特に言及はなく、安全な運用をしているそうです。ソース

学べる事

特に考えることなくお金を入れておくだけで、高い利率を生み出してくれるCeFiは魅力的ですが、こういった不安定な市場では自分の資産を守るためにも彼らがどのような運用を行っているのか、運用におけるリスクは何か、運用先のプロトコルはどのように回っているのかを理解するのが良いと思います。

ソース元

サムネイル引用元: @otterooooのツイート

BlockFi CEO: @BlockFiZacのツイート

SBF: @SBF_FTXのツイート

3ACの出資先: @milesdeutscherのツイート

3ACに関するまとめ: @GOU_0013のツイート

stETHのDepegに関して: @SmallCapScienceのツイート

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