Synthetixの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Synthetix

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。
本記事では合成資産の発行プラットフォームであるSynthetixについて、その概要や具体的な仕組み、課題などを解説します。後編の本記事では、Synthetixが新たに展開を予定しているSynthetix v3について解説したのちに、Synthetixエコシステムを形成するKwentaやLyraなどについても理解を深めます。

SynthetixをSynthetix単体で理解しようとすると、単なる暗号資産担保型ステーブルコインの発行プラットフォームのように感じますが、上記で述べたプロダクトは、相互に関連しSynthetixエコシステムをより強固なものとしています。

Synthetix V3とは


引用元:Synthetix
Synthetix V3とは、これまでのSynthetix v2をより進展させたもので、暗号資産デリバティブ市場を含めたLiquidity Layerとなることが示唆されています。というのも一般的に個々のプロジェクトがデリバティブを採用するには、流動性不足という大きな課題があります。したがってトークンの排出といった様々なインセンティブをユーザーに提供し、流動性を提供してもらおうとしますが、そのインセンティブが終了したとたん、ユーザーが離れていくという例は枚挙にいとまがありません。

一方、Synthetix v3では、パーミッションレスにSynthetix上で、新規のデリバティブプロダクトを統合できるよう、工夫が施されます。具体的にプロジェクト側は、どの流動性プールを統合するのかについて選択するほか、どのオラクルを使用するか、カウンターパーティである流動性提供者、つまりsUSDの発行者に向けた、インセンティブスキームも自由に設定することができます。この仕組みは上記の図を踏まえるとより理解が進むかと思います。

また上段で、sUSD発行者に向けたという表現を用いましたが、Sythetix v3では、これまでのv2で採用されてきたsUSDを新しいステーブルコインに移行することが発表されています。したがって現在の V2 までのバージョンのトークン名をoldUSDまたはlegacyUSDに変更するということが決定しています。

さてその他にも、v3に際して発表された点の理解を深めていきましょう。まず1点目はマルチコラテラルステーキングです。マルチコラテラルステーキングとは、その名の通り、SNXトークン以外のトークンも担保としてサポートするというものです。Synthetix V3 では、各Vaultが 、1種類の担保 トークンを採用する設計となっています。

具体的に現時点ではWETH、SNX、WBTCが担保トークンとして用いられると予定されています。もちろん、これらのValutを構成する担保トークンは、Sythetixにおけるガバナンスを通じて、変更することが可能となっています。加えて、プロトコルはプールにおいて、採用したいVaultを追加することができます。

例えば、ETHとDAIで構成されるプールを構築したいのならば、ETH VaultとDAI Valutを追加するといった具合です。どの資産を担保として提供し、利回りを獲得するかを選択できるため、ステーカーとしての自由度が高まりまることが期待されるほか、プール自体が特定のマーケットに統合されているため、より優れたヘッジが可能となります。このことはカウンターパーティのリスクの低減に寄与することが期待されます。

2点目は、クロスチェーンへの対応です。Synthetix V3では、複数のEVM互換チェーンでの流動性の利用を可能としており、将来的には、あらゆる EVM チェーンで利用できることを目指しています。ここからは簡単な具体例をもとにその理解を深めたいと思います。SynthetixではTeleporterという仕組みを採用することで、あるチェーンの流動性を他のチェーンでも使用できるようになります。ユーザーが、例えば、OptimismのSynthetixにおいてプールに流動性を提供した場合であっても、Arbitrum上のマーケットはこの流動性をプラットフォームで利用することができます。

つまりユーザーが自分の資産をVaultに提供したとし、それが特定のプールに追加されます。このプールは、Synthetix 流動性プールの上にマーケットを作成するプロトコルが使用できます。これらのマーケットは、下記で紹介するKwentaやLyraといったSynthetixプラットフォーム上に構築されたDapps上でユーザーがやり取りするものです。

Kwenta

さてここからは、Sythetix自体から、少し離れてSynthetixエコシステムを形成するいくつかのプロジェクトについて、その理解を深めたいと思います。そもそもSythetix自体は、非常に非直感的なプロジェクトでなかなか概要を把握することが、難しいかと思います。というのも現物だの、無期限先物だの、コモディティ、為替などの取引が可能であると言われるものの、肝心のSythetixの公式ページにアクセスすると、ステーキングとsUSDの発行が行えるに留まります。

しかしながら、Synthetixの重要な点は、KwentaやLyraといったプロジェクトのフロントエンドを通じて、Synthetixを利用できる点にその妙があるのです。したがってここからはそのKwentaやLyraといったSynthetix上で構築される具体的なプロジェクトを理解しながら、その関係性を解説します。まず初めにKwentaはSynthetixエコシステムの中核を担うプロダクトで、Synthetixで発行したsUSDを証拠金として、無期限先物取引を行うことができます。また合成資産であるSynthを交換できるDEXを備えており、sETHやsBTCからsUSD、sEURなどのスワップ取引を執行することができます。

そのKwentaでは、暗号資産市場において馴染み深いAMMやオーダーブックを使用しません。スマートコントラクトを使用して取引が実行される P2C(Peer to Contract) 取引であり、Chainlinkのオラクルを活用して、トークンの取引レートを設定するための価格フィードを取得します。 Kwentaの特色として、これまでに解説したSynthetixの仕組みを活用することで、無制限の流動性、ゼロスリッページを実現しています。またKwentaでは豊富な種類の銘柄が採用されており、sUSD、sEURといった法定通貨、コモディティでは、sGOLD、sSILVERなどが、そしてsBTC、sETH、sBNBといったトークンの無期限先物も提供されています。

Lyra


引用元:Delphi Digital
Lyraは、AMMを活用したオプション取引のプラットフォームです。注目すべき点は、Synthetix の sUSDステーブルコインを主要トークンとして利用できることで、トレーダーは sUSDを使用してオプション取引を行うことができます。またLyraでは、オプション取引のベースとなるMMV(Market Maker Vault)をデルタニュートラルに近づけるため、この点においてSynthetixが活用されています。

本記事の内容は以上です。

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