Aerodrome Financeの理解を深める 前編

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はじめに


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本記事ではEthereumのLayer2 Baseでサービスを展開する分散型取引所のAerodrome Financeついて解説します。現在暗号資産市場は、BTCやETHのETF承認などを要因とした上昇相場を終え、こじっかりという状況が続いています。

そのような中、主要なブロックチェーンにおいて、盤石なTVLを築いているのが大手暗号資産取引所Coinbaseが手がけるLayer2 Baseです。現在のBaseは、Layer 2ソリューション全体をTVL順で並べた際にArbitrumについで第2位であり、Layer 2ソリューションの中でも勢いのあるブロックチェーンといえるでしょう。

また多くのLayer2が行っている将来的なエアドロップの配布を示唆することでユーザーを集めるマーケティングを行なっていない点にもその底堅さがみて取れます。(もちろんこれは将来的なエアドロップの配布を否定するものではありませんが、zksyncやstarknet、scroll等々と比較しても、その可能性は低いと筆者は考えています)

さて、着実にTVLを伸ばすBaseにおいて、そのTVLのおよそ50%を占めるのが分散型取引所のAerodrome financeです。Aerodromeは、Uniswapを凌ぐ勢いの取引高を記録しており、Baseチェーン上で最大の取引所となっています。本記事ではそのaerodromeについて具体的な仕組みなどを解説しながら、その強さに迫ります。AerodromeはUniswapやCurveといった分散型取引所の特長をそれぞれ採用しながら、独自に進化したDEXで、これまでの分散型取引所とは様々な点で異なる機能を備えています。

Aerodrome Financeとは

Aerodrome Financeは、Baseネットワーク上に構築されたAMM、分散型取引所です。注意点として、AerodromeはBase上でのプロダクトでありますが、そのオリジナルは、VelodromeというOptimism上で展開されていた分散型取引所です。したがってAerodromeはVelodromeのフォークプロジェクトと言えるでしょう。さて、Aerodromeの特筆すべき点は、上記でも少し述べたように他の著名なDEXから優れた機能を統合していることです。具体的には、以下のプロジェクトの特徴を取り入れています。

トークンペアの特性に最適なAMMの提供

引用元:A41
1点目は、Curve Financeに代表されるステーブルコイン特化のAMMをサポートしている点です。これらのAMMは、Uniswapの「x y = k」という定数積公式とは異なるアプローチを採用しており、ステーブルコイン取引において優れた効率性を実現しています。Uniswapの定数積モデルと比較すると、主に低スリッページと効率的な価格発見という二つの利点があります。まず、Uniswapの「x y = k」モデルでは、大口取引時に大きなスリッページが発生する可能性がありますが、CurveのようなステーブルコインAMMは、取引量が増えても価格インパクト(価格への影響)を最小限に抑える特別な数式を使用しています。確かにUniswapは広範囲の価格変動に対応できるように設計されていますが、ステーブルコイン間ではそれほど大きな価格変動は期待されません。そのため、Curveはステーブルコインの特性に合わせて最適化された価格曲線を使用し、ペッグ(ドル建てステーブルコインの場合には1ドル)付近でより効率的な取引を可能にしています。AerodromeではWETH-USDCのような大きな価格変動が見込まれるトークンペアに対しては、従来の定数積公式を採用している一方、USDC-USDTもしくはETH-stETHのようなステーブルペアにおいては、ステーブルコイン特化のAMMを提供しています。したがってユーザーは、より効率的で経済的な取引を実行することが可能になるのです。

ve(3,3)システムの導入による新しいインセンティブ構造とその概要


引用元:Mettalex
2点目はve(3,3)システムの導入です。もともとこの仕組みは、CurveとConvexによってその原型が、Solidly によって、 ve(3,3)システムへと昇華した経緯があり、このBribeシステムは、Aerodromeでも導入されています。ve(3,3)システムは、DEXにおける流動性提供者へのインセンティブ強化を目的とした新しいアプローチです。これらのモデルは、流動性提供者に新しいインセンティブを提供することにより、より持続可能で効率的な流動性供給メカニズムを提供します。

まず、vetokenシステムはCurve Financeによって広く知られるようになりました。このシステムでは、ユーザーがガバナンストークンをロックすることで投票権と追加の報酬を得られます。Convexは、このCurveのエコシステムにおいて流動性提供者のインセンティブを最大化することを目的としており、CRVトークンの価値を高め、ステーキング報酬を最適化します。その一方、ve(3,3) モデルlは、Andre Cronje氏が開発したSolidlyプロトコルによって導入された概念です。このモデルは、Curveのvetokenシステムをベースにしつつ、さらに革新的な要素を加えています。ve(3,3)の「ve」は投票エスクロー(vote-escrowed)を表し、「(3,3)」はゲーム理論の概念を指します。このモデルでは、トークンのステーキングと流動性提供の両方に報酬を与えることで、プロトコルの価値と流動性を同時に高める正のフィードバックループを生み出します。

Aerodromeは、このSolidlyのve(3,3)モデルを基盤として採用し、さらに発展させています。このプロトコルでは、流動性プールの需要に応じて報酬を動的に調整する仕組みや、カスタマイズ可能なフィーモデルなどの機能を追加しています。これにより、より柔軟で効率的な流動性提供メカニズムを実現しています。Curveが普及させたvetokenシステム、Solidlyが導入したve(3,3)モデル、そしてConvexによるインセンティブ最適化の取り組みは、それぞれがDeFiエコシステムにおける流動性提供の課題に対する新しいインセンティブを提示しています。これらのアプローチは、単なる取引プラットフォームを超えて、持続可能な経済システムの構築を目指しており、長期的な視点で流動性提供者とプロトコル全体の利益を最適化しようとしています。

これらの特徴により、Aerodromeは単なる取引所としての機能を超え、複雑な経済システムを内包したDeFiプロトコルとして機能しています。ユーザーは取引、流動性提供、ガバナンス参加など、多様な方法でプロトコルに関わることができ、それぞれの関与度に応じた報酬を得ることができるのです。

まとめ

ここまではAerodrome Financeが備える機能の概要を中心に解説してきました。後編では先に述べた仕組みを具体的にAerodrome Financeに当てはめながら、より詳細な解説をおこないます。

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