ドル円ヘッジ(為替ヘッジ)の方法

DeFiでステーブルコインを利用して運用する場合には、基本的に米ドル建てで運用することになります。

一応、日本円ステーブルの JPYCjJPY なども存在しますが、運用先の市場が少なかったり、あったとしても流動性が極めて少なく数百万円や数千万円といったまとまった金額を運用するのは困難です。

そのため保有している日本円で、国内に上場しているドルステーブルコインの DAI を購入するか、ビットコイン (BTC) やイーサリアム (ETH)、リップル (XRP) といった国内で上場しているコインを購入し、そのコインを海外の取引所に送って USDTUSDC などのステーブルコインを購入するなどして、ドルステーブルコインを入手する必要があります。

したがって、円ショート・ドルロングのポジションを持つことになります。

ドル円のボラティリティはビットコインなどの仮想通貨と比べればたかが知れていますが、それでもドルロングのポジションを持つことで為替変動リスクにさらされることになります。

運用成績を円建てで評価する場合にはこのようなドル円の為替変動リスクも回避(ヘッジ)したいという方も多いでしょう。

そこでこの記事ではドル円の為替変動リスクをそもそもヘッジすべきか、またヘッジすると決めた場合にはその方法とは?という話をします。

為替ヘッジは行うべきか

もしこの記事を読んでいる方が日本円しか持っていない、という場合にはそもそも為替ヘッジをするべきではないかもしれません。

どのような通貨でもインフレ(= 通貨自体の購買力が下がり、モノの値段が上がること)が起こる可能性があります。

どの通貨を持っていたとしてもインフレになる可能性があるというのは変わらないのですが、通貨によってインフレ率というのは異なります。

もし現在の資産構成が日本円が100%に近いものになっている場合には日本円が猛烈なインフレに見舞われると数値上は総資産額が変わらなかったとしても、購買力は低下し、実質的に資産が目減りしてしまいます。

そういった事態を回避するためにも、保有している現金を米ドルやユーロなど複数の通貨に分散させることで、インフレリスクを分散させる方が一般的にはいいでしょう。

もちろん、米ドルもユーロもインフレする可能性はありますし、どの通貨を持っていてもすべての通貨がインフレするという可能性もありますが、日本円に一点張りしてしまうよりはだいぶマシです。

ちなみに日本円についてはバブル崩壊後からずっとデフレ(= 通貨自体の購買力が上がり、モノの値段が下がること。インフレの逆)状態であったのですが、日銀は「インフレ率2%を目指す(インフレターゲット、インタゲ)」という指針を2013年から掲げており、意図的に通貨の供給量を増やしたり、金利を極めて低く抑えることでインフレ率が上昇するように尽力しているのが現状です。

一般的に投資全般でみたとしても、複数のアセットに資産を分散させることは投資の基本中の基本であり、DeFiで運用をしなかったとしても米ドル貯金やユーロ貯金をするなどして資産を分散させることが一般的には推奨されます。

したがって、もし日本円しか持っていないのでしたら、これを機にドルに対するエクスポージャを持つというのは一つの考え方として「アリ」だと考えられます。

とはいえ、もし資産の大半をDeFiで運用しようとする場合には今度はドルが100%になってしまいますので、それはそれであまり健全ではなく、多少なりとも円やユーロなどの資産も持つべきでしょう。

どのくらいの比率で現金を分散させるのかについては個々人の好みや相場観、ライフステージによっても変わると思いますので、どういった比率で現金を持つべきか一度よく考えてみてくださいね。

納税や資産管理上、とはいえ100%円建てで持ちたい方もいらっしゃるでしょうし、「いや、基軸通貨のドルで全部持つべきだ」という方もいらっしゃるでしょうから、何%ずつ持つべきなのかといった具体的な数字は示すことができません。

いずれにせよ、せっかく溜めた貯金を「守る」ためにはどうすればいいのか、といった観点から現金の保有比率を決めてもらえればと思います。

ドル円ヘッジ(為替ヘッジ)の方法

それではドル円ヘッジの方法をお教えしましょう。

……と言っても簡単です。

答えは「FX口座を開設し、ドル円のショートポジションを持つこと」です。

例えばドル円レートを簡単のために1ドル=100円、総資産が5,000万円でドルと円を1:1で持ちたい、としましょう。

そして生活資金や突然の出費のために500万円を手元に残し、残りをすべて運用に回すと仮定します。

何もドル円ヘッジの対策を講じなければ

  • 日本円: 500万円
  • 米ドル: 45万ドル (4,500万円分)

となりますが、これでは1:1になりませんので適切にヘッジする必要があります。

そのために、FXの証拠金として例えばさらに500万円を残すとすると、米ドルは40万ドル (4,000万円分) 持つことになりますから、1,500万円分のドルを持ちすぎとなります。

そのため、この1,500万円分のドル (15万ドル) をFXでショートすれば大丈夫です。

すると資産構成としては、

  • 日本円: 500万円
  • FX証拠金: 500万円
  • FXポジション: -15万ドル (-1,500万円分)
  • ステーブルコイン: 40万ドル (4,000万円分)

となります。

こうすることで実質的に日本円とドルを1:1で持ちながら、資産の大半を米ドル建てで運用することができます。

上記の例では証拠金として500万円をデポジットしていましたが、これだとレバレッジ3倍と比較的低レバレッジですのでもう少し証拠金をケチってもいいかもしれません。

ただし、証拠金をケチりすぎると急激な円安・ドル高になった場合にロスカットされてしまう危険性がありますので注意してください。

またドル円レートが変動した場合にはドルと円の保有評価額にアンバランスが発生してしまいますので、そうなった場合には適切にリバランスするなどの対策も必要です。

欠点としては、FX口座に証拠金が必要になってしまうので資金効率が悪化することと、米ドルのほうが日本円よりも概して金利が高いため、金利スワップ分が延々とFX口座から差し引かれてしまう、という点です。

資金効率については、なるべく証拠金をケチるなどで対策ができます(あまりケチりすぎるのはおすすめしませんが)。

また金利のマイナススワップについてはDeFiでの運用益のほうが大きければトータルではプラスになります。

FXのスワップ金利はおおむね1〜2%程度かそれ以下(※執筆時点)ですので、DeFiで5〜10%程度で運用できれば十分相殺可能です。

とはいえ、一年間持ち続けると支払うスワップ金利はそれなりの金額となりますので、どのくらいドルをヘッジして円ポジションを増やすのかについてはご利用のFX口座のスワップ金利と相談して決めてもらえればと思います(たいていの場合には「スワップカレンダー」という名前で1万ドル分のポジションを持った場合に一日あたりに支払う金利が公式サイトに掲載されています)。

まとめ

  • ドルと円の保有比率を十分検討しよう
  • 保有比率を決めたらFX口座でヘッジすることが可能
  • ドルショートを持つことでFX口座で金利の支払いが発生し、DeFiでの収益と相殺することも忘れずに

以上となります!

それではよいDeFiライフを〜。

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