ステーブルコイン売り豚戦略

こんにちは!弐号です。

ステーブルコインは法定通貨(主に米ドル)に価格連動をするように設計されたコイン(トークン)ですが、何らかの欠陥が発見されたりすることでその価格が1ドルを下回ってしまう(デペグする)可能性があります。

例えば、2022年5月頃にTerraチェーン上で発行される $UST というステーブルコインがほぼ無価値になり、現在では0.02ドル程度で取引されています。

また、2023年3月にはUSDCがデペグし、一時的にではありますが0.88ドル程度まで下落しました。

CoinMarketCapより引用)

どのステーブルコインも潜在的に何らかの欠陥が指摘され、下方向にデペグしてしまう可能性があります。

従って、もしステーブルコインをデペグするより前にショートしていれば、大きな利益を獲得できる可能性があります。

そこで本記事ではステーブルコインをショートする方法をいくつか紹介します。

ステーブルコインのショートに賭けるという投資戦略

ステーブルコインが価格を維持する仕組みには様々なものがあり、一概には言えないのですが、この投資戦略では多くの場合には上方向にデペグする(1ドルを上回る)ことよりも、下回る(1ドルを下回る)可能性のほうが高いという点に着目しています。

例えば、法定通貨担保型のUSDTやUSDCといったステーブルコインは、1ドルを上回った場合には新規発行を行って市場で1ドル以上の価格で売り抜けることによって収益を得ることができる(アービトラージができる)ため、上回る可能性は非常に低く、一時的に上回ったとしてもすぐにこのアービトラージにより1ドルに収斂してしまいます。

一方で、法定通貨担保型のステーブルコインが1ドルを下回った場合には、1ドル以下の価格で市場で買い取り、償還を行うことによってアービトラージができるわけですが、もし担保として持っている法定通貨が何らかの理由で毀損してしまっていた場合(多くの場合、担保の米ドルを国債などの債権に投資して得られた利回りによって運用がされているのですが、その債権価格が下落したり、デフォルトしてしまった場合)には、十分な担保資産を用意することができずにアービトラージの原理が働かなくなってしまうことになってしまいます。

従って、上方向のデペグリスクが少ないステーブルコインに対しては、ショートを行うのは低リスク・高リターンを生む可能性のある投資戦略と言えるでしょう。

実際、筆者はUSDCがデペグした際に(狙ったわけではないですが)USDCの大量のショートポジションを抱えていたため、1USDC = 0.9USDTで借り入れていたコインを買い戻すことにより、+10%の収益を獲得することができました。

もっとも、ステーブルコインがデペグすることはほぼ予測不可能であり、デペグが発生しなければポジションを構築するための金利の支払いや、資金拘束が発生しますので、完全にコストゼロで行える投資戦略とは言えませんが、一考に値するものではあると考えています。

と、まぁステーブルコインをショートする投資戦略自体の考察はこのくらいにして、実際にステーブルコインをショートする方法を紹介していきます。

一覧

以下では四通りの方法でステーブルコインをショートする方法を見ます。

先にメリット/デメリットが分かる一覧表を置いておきますので、参考にしてください。

方式 マイナーコイン対応 資金効率 リバランス頻度

また、この記事に記載されている方法以外で「もっといい方法があるよ!」というのを発見した方はぜひご一報ください。全ステーブルコイン売り豚が喜びます。

ステーブルコインをショートする方法

ステーブルコインと米ドルのペアでのマージンないし perpetual swap 市場が存在すれば、単純に空売り(ショート)するだけで済むのですが、残念ながら多くの取引所/ステーブルコインでそのような通貨ペアが存在しないため、状況は少々複雑です。

①レンディングで借り入れて売却する

最も単純な方法はレンディングを利用してステーブルコインを借り入れ、そのステーブルコインを売却してしまうというものです。

かなり当たり前な方法と思われるかもしれませんが、この方法にはいくつか障壁が存在します。

まず第一に、レンディングに担保として差し入れるトークンを何で用意するか?という問題です。

米ドル自体を担保として借り入れができればいいのですが、多くのDeFi/CeFiではトークンやコインしか担保にすることができませんので、何らかのトークンやコインを買い入れ、それを担保とする必要があります。

ビットコインなどのクリプトを担保にするのでは担保資産の価格変動をモロに受けてしまいますし、ドル建てのステーブルコインを担保としたとしても、その担保のステーブルコインがデペグしてしまえば精算されてしまう結果となってしまいます。

そのため、担保として利用するためにビットコイン(など)を購入し、それと同額のビットコインを BTC/USD ペアの perpetual swap 市場(以下「パーぺ市場」)などでショートし、エクスポージャをネットゼロにする必要などが発生します。

また、借り入れたステーブルコインを売却するとしても、多くの海外の取引所では米ドルの取り扱いがないですし、国内の取引所でも日本円しか取り扱いがないところがほとんどです。

こちらの問題に対しては、日本円に対して売却を行い、FXなどで同額のドル円ロングを入れる、などによって解決することができます(ただし、スワップ金利が発生します)。

さらに問題になるのが、国内取引所ではステーブルコインの取り扱いが少なく、ショートしたいステーブルコインを直接売却できないことですが、これについては一旦ビットコインなどを経由して国内取引所に送るなどを行えば、実質的に売却することが可能です。

さらに、レンディングで借り入れを行うためには、借り入れたステーブルコインよりも多くの資産(概ね150〜200%程度)を担保として預け入れる必要があり、資金効率の面でもあまりいい方法とは言えません。

しかし、流動性の少ないステーブルコインは取引所での扱いがなかったり、現物市場しかなく後述するように空売りができなかったりするため、そういった取引ペアの存在しないマイナーなステーブルコインをショートするのには十分利用できる方法でしょう。

まとめると、例えば

  • BTC現物を購入
  • BTC/USD のペアで perpetual swap 市場で上記と同額をショート
  • BTCを担保としてステーブルコインを借り入れ
  • 借り入れたステーブルコインをBTCに交換
  • BTCを国内取引所で売却
  • 売却したステーブルコインの枚数と同数をFXでドル円ロング

といった手順が要求されます。

かなり複雑になってしまいますが、これでステーブルコインのみのエクスポージャをマイナスにすることが可能です。

この場合に発生するポジションの維持コストは

  • BTC/USD の perpetual swap 市場の funding rate (FR) 金利
  • レンディングでのステーブルコインの借入金利とビットコインの預け入れ金利の差額
  • FX のドル円ロングのスワップ金利(現在は日本円が低金利なため、プラス)

の合計となります。

一方で資金拘束量については

  • レンディングの担保 (200%程度)
  • perpetual swap 市場での証拠金 (40%程度)
  • FXでの証拠金 (10%程度)

となります。

なお、括弧内はショートポジションの大きさに対して必要な資金量の目安であり、合計で2.5倍ほどの資金が必要となります。

また、厄介なことに、ビットコインやドル円の価格変動が起きた際には適切にリバランスを行い、いずれものポジションが精算されないように注意する必要がある点にも留意する必要があります。

という感じでアイディアとしては「借りて売る」という、まさにいわゆる空売りと同じことをやりたいだけなのですが、かなり複雑になり、資金拘束量も大きくなってしまいますが、マイナーで取引ペアの存在しないようなステーブルコインをショートする場合には十分検討できる方法でしょう。

②ペアトレード

次に紹介するのが、ビットコイン(など)のロングポジションとショートポジションを同時に持つという方法です。

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