サムネイルの引用元:DeFi Saver Blog
はじめに
こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では、暗号資産担保型ステーブルコインであるLUSDとプロトコルのLiquityについてその理解を深めます。ステーブルコインを1つとっても、その種類には様々なものがあり、いわゆる法定通貨担保型ステーブルコインには、米ドルや米国債などを担保としたUSDCやUSDT、BUSDがその代表として挙げられます。
また今回解説を加えるLUSDやMakerDAOが発行するDAIなどは、暗号資産担保型ステーブルコインと呼ばれています。その他にもアルゴリズム型ステーブルコインと呼ばれるものも存在し、昨年のLuna-USTの崩壊は記憶に新しい方も多いかなと思います。以上のようにステーブルコインは大きく分けて、3種類に分類されるわけなのですが、そもそもなぜ様々な仕組みが提案されているのでしょうか。
引用元:De.Fi)
それはステーブルコインにおいても、いわゆるトリレンマという問題が存在しているからです。ステーブルコインが持つトリレンマの要素としては、分散性、ペッグの安定性、資本効率性の3点があり、これら3点を完全に満たすステーブルコインは、構築することができないとされています。LUSD、Liquityの詳しい解説に入る前に、各ステーブルコインが抱える問題についてその理解を深めることで、どのような点においてLiquityが優れているのか、反対に抱える問題はなんなのかについてより解像度が上がっていくと考えます。
今回はまず初めに、ステーブルコインとしては最も親しみ深い法定通貨担保型ステーブルコインについて、その概要を理解します。その上で各種ステーブルコインプロダクトがどの点を犠牲にしているのか、またどの点を強みとしているかに着目することでよりよりプロジェクトの理解に繋げていきたいと思います。
ステーブルコインの各種概要
法定通貨担保型ステーブルコイン
法定通貨担保型のステーブルコインとは、米ドルなど法定通貨による裏付けがなされているステーブルコインのことを指します。基本的な仕組みとしては、カストディアンが法定通貨を保管し、保管された法定通貨の価値と1対1の割合でステーブルコインを発行します。仕組みとしては非常にトラディショナルなものではありますが、USDCやUSDTといった多くの法定資産担保型ステーブルコインは、ERC20と呼ばれるトークンの規格に沿って発行されるため、Ethereumチェーン上で問題なく取り扱われます。
法定通貨担保型ステーブルコインの特長は、他の仕組みを採用するステーブルコインと比較して価格の安定性が堅固であることが挙げられます。実際に法定通貨担保型ステーブルコインは2014年にサービスの展開を開始したUSDTをはじめとして、非常に長く暗号資産市場で活用されてきました。背景もあり、他のステーブコインと比較して価格が最も安定しているステーブルコインだと言えます。しかしながら、そのUSDTも裏付け資産となる法定通貨が十分にないのではという懸念が常に取り沙汰されており、未だ不透明な様相を呈しています。
また2023年にはUSDCを管理するCircle社が、USDCの準備金の約7.8%となる33億ドル(約4416億円)をシリコンバレー銀行へ預金していたが、同行の経営破綻により、一時的に準備金が不足する事態となった。それに伴ってUSDCの価格は、0.88ドル近くまでディペッグするなど大きな混乱をもたらしました。以上、2つの例に共通して言えるのは、法定通貨担保型ステーブルコインは、準備金の管理が単体もしくは極めて少数の事業者によって保有されているということです。つまり他のステーブルコインと異なり非常に中央主権的であって、事業者に依るリスクが非常に大きい点が挙げられます。
暗号資産担保型ステーブルコイン
上記で問題となった分散性に対応するステーブルコインの仕組みとして提案されているのが、暗号資産担保型ステーブルコインと呼ばれるものです。暗号資産担保型ステーブルコインは、法定通貨担保型ステーブルコイン担保部分をETHなどの暗号資産に変えたもので、DAIや今回解説するLUSDが挙げられます。分散性という課題に対して解決策を提示した暗号資産担保型ステーブルコインですが、その分資金効率性は悪化しています。というのも基本的に1ドル相当のステーブルコインを発行するためには、1ドル以上の暗号資産を担保としなければならないことから、過剰担保型とも呼ばれています。
そんな中でLiquityのLUSDは、その分散性という点において確固たる地位を築いています。読者の皆様は、MakerDAOが発行するDAIの方をその発行量やペッグの安定性含めて、想起される方も多いと思います。ただDAIは、その分散性を犠牲にしているのです。というのも2020年3月にはコロナショックの影響から1日にして暗号資産市場全体の価値が50%近く失われるといった未曾有の市場崩壊が発生しました。当時DAIの担保にはETHが多分に採用されていたため、市場の崩壊によってペッグ機能が失われてしまったほか、オラクルや清算機能が十分に機能せず、プロトコルとして大変厳しい状況に追い込まれました。
それ以後、DAIの担保にはUSDCが追加されることとなり、現在、担保の50%以上は、USDCで構成されていることから、DAIは、USDCと密接に関係しているのです。長々と書き連ねてしまいましたが、LiquityのLUSDはETHのみを担保としており、分散性という観点から見れば突出しています。以下ではそんなLiquityのLUSDについて、その基本的な概要を理解していきたいと思います。
Liquity-USDの概要
LUSDは、仕組み自体はMakerDAOが発行するDAI、もっと乱暴に言えば一般的なレンディングプロトコルの仕組みと同じです。ユーザーはETHを預けて、ステーブルコインLUSDを発行することができます。ただLUSDは発行時と償還時にのみ手数料がかかる仕組みであって追加の金利費用などは一切ありません。ETHの担保率は110%に設定されているほか、基本的にパラメーターはデプロイ時に設定されたものがそのまま採用されているため、ガバナンスフリーとなっています。逆に言うと、例えば昨今話題のLSDトークンなどを担保とすることは今後もできないため、特長と表現できますが、意見が別れる点でもあるかと思います。
引用元:DefiLlama’s Newsletter
Liquityはフロントエンドにも工夫が施されており、複数のフロントエンドからアプリケーションにアクセスすることが出来ます。つまり例え1つのフロントエンドに何らかの障害が発生したとしても問題ありません。この他細かい仕様として、UniswapのLUSD-ETHプールやLiqiutyの Stability Poolに流動性を提供することでインセンティブトークンのLQTYを得ることができることや、そのLQTYを預けると、手数料収入を獲得できることなども併記しておきます。
まとめ
前半である本記事では、暗号資産担保型ステーブルコインのLUSDについて、他のステーブルコインが抱えている問題を等を比較しながら、その理解を進めてきました。後半では、概要のセクションで解説した、清算の仕組みやスタビリティプールの仕組み、分散型フロントエンドについて、より詳しい解説を行いたいと思います。