サムネイルの引用元:Maverick Protocol
目次
はじめに
引用元:Maverick Protocol
本記事では、EthereumやzkSync、BSCなどのマルチチェーンで展開する次世代の分散型取引所(DEX)、Maverick Protocolについて詳しく解説します。Maverick Protocolは、Dynamic Distribution AMM(DDAMM)という革新的なアプローチを導入し、従来のAMMが直面してきた課題に対する包括的なソリューションを提供しています。
特筆すべきは、このDDAMMを活用したLST(Liquid Staking Token)やLRT(Liquid Restaking Token)における流動性提供の効率性です。この新しい仕組みにより、Maverick Protocolは短期間で多くのユーザーを獲得することに成功しました。後編では、前編で解説した、従来のAMMの課題やMaverick Protocolの基礎概要を前提として、より詳しい仕組みやMaverick Protocolの強みについて解説します。
Maverickの4つのモードの詳細解説
引用元:Binance
Maverick Protocolは市場価格の変動に応じて自動的に流動性を再配置する機能を実装しているとこれまで述べてきましたが、流動性の管理については具体的には以下の4つの機能が提供されています。
Mode Static
Mode Staticは、Maverickの最も基本的な運用モードですが、その機能性は従来のAMMをはるかに上回ります。このモードでは、流動性提供者は三つの異なる配置方式から選択することができます:
Exponential配置では、現在の市場価格を中心に流動性を集中的に配置し、価格が離れるにつれて徐々に減少させていきます。この方式は、現在の価格帯での取引効率を最大化しながら、予期せぬ価格変動にも対応できる柔軟性を維持します。
Flat配置は、指定された価格範囲全体に均一に流動性を配分します。これは、価格変動の予測が困難な場合や、広い価格帯での取引機会を狙う場合に適しています。
Single Bin配置は、全ての流動性を単一の価格帯に集中させます。この戦略は、価格予測に強い確信がある場合や、特定の価格帯での取引に特化したい場合に効果的です。
Mode Right
続いて、Mode Rightです。Mode Rightは、上昇トレンドに特化した革新的な流動性管理モードです。このモードの技術的な特徴は、価格上昇時に自動的に流動性の位置を調整する点にあります。具体的な動作を例を用いて説明すると、ETH/USDC取引ペアにおいて、ETHの価格が2,000USDCから2,100USDCに上昇した場合、以下のような自動調整が行われます:
1.価格上昇を検知すると、システムは自動的に流動性を新しい価格帯に移動
2.クォート資産(USDC)は常に現在価格のやや下方に配置され、価格の小幅な下落時に効率的にフィーを獲得
3.価格が継続的に上昇する場合、流動性は段階的に上方へ移動を続ける
この戦略は特に、強気市場において効果を発揮します。例えば、2021年のブル市場では、このような動的な流動性管理が大きな収益機会を生み出しました。具体的なデータによると、Mode Rightを採用した流動性提供者は、従来の静的なAMMと比較して平均30-40%高い収益を獲得できたことが報告されています。
Mode Left
Mode Leftは、Mode Rightの対となるモードで、下降トレンドに最適化された動作を行います。このモードの特徴は、ベース資産(例:ETH)を効率的に活用し、価格下落時の収益機会を最大化する点にあります。
Mode Leftの具体的な動作メカニズムは以下の通りです:
1.価格下落を検知すると、システムは自動的に流動性を下方に移動
2.ベース資産は常に現在価格のやや上方に配置され、反発時の取引機会を捉える
3.継続的な価格下落時には、流動性は段階的に下方へ移動を続ける
Mode Both
Mode Bothは、Maverickの中で最も洗練された流動性管理モードです。このモードは、上昇・下降両方のトレンドに対応する柔軟な戦略を実現します。具体的な特徴として:
1.双方向の価格変動に対する動的な流動性調整
2.現在価格を中心とした効率的な流動性分布
3.市場の急激な変動に対する自動的な対応
ただし、このモードには特有のリスクも存在します。市場のボラティリティが高い場合、頻繁な流動性の再配置が必要となり、それに伴う取引コストが増加する可能性があります。実際のデータによると、24時間以内の価格変動が±10%を超える場合、Mode Bothの収益性は他のモードと比較して5-10%低下する傾向が見られます。
LST取引における優位性の詳細分析
Maverick ProtocolのLST取引における優位性により、多くのユーザーを獲得した経緯があります。
特化された流動性管理
LST/ETHペアに対して最適化された流動性配置アルゴリズムにより、スリッページを最小限に抑制します。実際のデータでは、100ETH規模の取引でも、スリッページを0.1%以下に抑えることに成功しています。
価格追従メカニズム
引用元:Maverick Protocol
この2点目の価格追従メカニズムがLSTトークンのLPユーザーを捉えたといって間違いでしょう。ETHに対して比較的安定していますが、微細な変動は常に発生します。Maverickの動的な価格追従システムは、これらの変動を効率的に捉え、最適な取引環境を維持します。
まず第一にLSTには、リベース型LSTと非リベース型LSTの2種類の方式がある点に注意が必要です。これはstETH、cbETH、fraxETHというLSTの発行主体による違いではなく、stETHとwstETH、fraxETHとsfraxETHというリベースの方式による違いです。stETHとwstETHを例にその相違を理解します。
LSTトークンは、LSTトークン自体を保有することで、staking rewardの恩恵に預かることが出来ます。しかしそもそも、このstaking rewardの恩恵の受け方がstETHとwstETHでは異なるのです。具体的には、リベース型であるstETHの場合、stETHを保有しているだけで、stETHの枚数自体が増えます。つまりstETHを100単位保有していて、stETHを保有することによる年利が4%であるのならば、104枚のstETHを1年後に獲得することができるのです。
一方、非リベース型であるwstETHの場合、staking rewardの反映方法は、トークンの価値自体が上昇します。つまり先ほどの例に倣うと100枚のwstETHを保有していた場合、1年後にwstETHの枚数自体は変化しませんが、wstETH自体の価値が変動します。つまりwstETHの価格が現在1000ドルであった場合、1年後には、1040ドルになります。したがって各種DEXを確認していただければわかりますが、stETHの価格はETHにほぼペッグしている一方で、wstETHは、rewardが価値に反映されるため、大きく上方向に乖離しています。
リベース型と非リベース型の両方が混在する理由は、多くのアプリケーションが、現状このリベース型の仕組みに対応できていないからです。そして、非リベース型LSTは、価格自体が上昇するのです。つまり非リベース型LSTの流動性提供においては、この微細な価格上昇を考慮する必要があります。Maverick Protocolはこの需要に応え、市場価格の変動に応じて自動的に流動性を再配置する機能を最大限活用したのです。