米連邦検察がUSTデペグ事件関与の疑いでSamを捜査。裏で誰が糸を引いたのか?

こんにちは。デフィ壱拾参号です。

New York Times は今月7日、FTXの創業者である Sam Bankman-Fried 氏が UST 及び Terra の価格操舵に関与した可能性があるとして、米連邦検察に調査されていると報道しました。

USTデペグ事件は2022年5月7日、Terraform Labs社(以下TFL社)によって発行されていたアルゴリズム型ドルステーブルコインである Terra USD (UST) のペグが乖離したことをきっかけに、裏付け資産であるTerra(LUNA)が99.9%下落した事件です。

詳細はこちらの記事で解説しているので合わせてご覧ください。
【金融事故速報】ドル連動のステーブルコイン「UST」が崩壊し、一時0.21ドルまで下落

それでは本題に入りましょう。

USTデペグ事件はSamが裏で糸を引いていたのか?

連邦検察は、SamがUSTデペグ事件と繋がりがあったとみて調査を開始しましたが、調査はまだ初期段階で、実際にSamがUSTデペグ事件に関わっているかどうかはまだ明らかになっていません。

USTデペグ事件の原因がSamによる価格操舵だとしたら、Samは暗号市産業界でかつてないほどにえげつない数十億ドル規模の顧客資産不正流用詐欺をやっているということになります。

SamはNew York Timesのインタビューにて「市場操作についての認識は一切ない」と発言しており、今後の調査で明らかになっていく見通しです。

この報道に対して、TFL社の創業メンバーである Do Known 氏は、Genesis Trading がFTXに10億ドルのUSTを提供した可能性を示唆しています。Genesis Tradingは、UST事件の直前にLUNA財団警備員(LUNA Foundation Guard、以下LFG)から10億ドルのUSTをOTC(取引所を介さない取引)で購入しており、これが意図的にデペグさせる攻撃のための購入だった可能性があります。

USTを暴落させた7つのアドレス

オンチェーンデータ分析企業であるNansenは、USTデペグ事件の原因に関してレポートを発表しています。
Nansenの調査によると、USTの価格が下落を始めた7日、Curve Financeにて、7つのアドレスから、USTをステーブルコインと交換する大規模な取引があったことが確認されており、デペグの要因は単独の攻撃者によるものではないと結論付けていました。
また、それらのアドレスはUSTプールの流動性が低いことを利用して大胆なアービトラージを行っていたようです。
しかし、仮にプールの流動性が枯渇していた原因がSamや、他の第三者にあるとすれば根本原因はこれら7つのアドレスではないことになります。引き金を引いたのは7つのアドレスですが、引き金がいつでも引ける状態を作り出したのはいったい誰なのでしょうか?

暴落の原因がTerraにある可能性

いつも通りtwitterを徘徊しているとUSTデペグ事件に関する興味深いリークを発見しました。

投稿者のFatman(@FatManTerra)さんは、(プロフィールによると)暗号通貨と金融の研究をしているTerra Research Forum のメンバーです。これまでもUSTデペグ事件に関する最新情報を投稿していました。

彼によると、TFL社は、USTが4月にかけてのデペグする直前の3週間で、合計4億5000万ドル以上のUSTをCurveで他のステーブルコインと交換しており、最期の交換の4日後にデペグが開始したというのです。

このデータを明らかにしたのは、匿名の研究者である@Cycle_22氏だそうで、Curveでの販売だけでなくBinanceにも大量に入金していたこともリークしており、合わせると、10億ドル以上の売り圧になります。

詳細のデータはスプレッドシートにまとまっています。

彼は事件の3週間前に、TFL社の短期間の無責任で巨大な売り圧によってCurveの流動性プールは浅くなっており、ペグは弱体化し、いつ誰が最期の引き金を引いてもおかしくない状態だったと主張しています。

このtweetには5000以上のいいねがついており、非常に拡散されていますが、個人的にこの主張には不可解な点があり、真偽が気になったので調査してみました。

不可解な点:TFL社の事件後の対応

今年11月にLFGは第三者の監査法人 JS Held を通して、事件後である5/8,12にTFL社及びTFGが行ったオンチェーン取引についてレポートを発表しています。

レポートによるとTFL社は、事件後にペグを戻すために総額28億ドルのBTCとステーブルコインを費やしたことが明らかになっています。

FatMan氏のリークによると、TFL社は事件の三週間前から4.5億ドルの資金を抜いたとありますが、これだと28億ドルに対して採算が合いません。

LFGの行動

事件のあった5月までの2か月でLFGがどのような行動をしていたかをまとめました。

3/15

LFG評議会は、4M LUNAを焼却して372M USTを鋳造し、これを別の暗号資産の獲得に充てることを決定しました。この焼却が完了すると、LFGが保有するLUNA以外の資金はおよそ22億ドルとなり、将来の成長のために8M LUNAが残ります。

5/6 (事件前日)

Three Arrows Capital(3AC)とGenesis Tradingから15億ドル相当のビットコインをOTC(取引所を介さない取引)で調達したと発表しています。そのうち3ACとの取引は5億ドルでした。

LFGの行動 (箇条書き)

以上の事実を時系列順に箇条書きしてみます。

3月
・LFGの評議会はLUNAを他のステーブルコインに変換して外部担保にすると発表
・LFGは4M LUNAを372M USTにしたのちに、Curveで他のステーブルコインに交換していった
4月
・LFGはBTCを調達することを計画
・3ACからOTCで5億ドル相当のビットコインを調達開始
・GenesisからOTCで10億ドルのビットコインを調達開始
5月
・資金調達が完了
・デペグ事件

考察

ここからは私の考察ですが、FatManの主張する4.5億ドルの「無責任で巨大な売り圧」の履歴は、3ACとのOTC取引の履歴なのではないでしょうか。そうすればTFL社が事件後にデペグに対して善処したことも納得できます。
また、FatMan氏はTFL社が無責任にUSTを売ったことが原因で流動性が枯渇したと発言していますが、TFL社の売り圧が直接的な原因になったと結論付けるには売り圧が小さすぎる気がします。
したがって、FatMan氏の発言はTFL社が悪意を持ってLUNAを暴落させたという旨でしたが、これは間違っていると思います。
しかし、Genesisとの10億ドルのOTCの行方は少しきな臭い印象があります。GenesisとSamがつながっていて、USTの流動性を低くした可能性は十分に考えられるでしょう。

さいごに

USDデペグ事件は今年のクリプトの事件の中でも、最も業界に影響を与えた事件なだけあって、様々な憶測が飛び交っており、広く拡散されている情報でも、中には、きちんと検証しなければ今回のように信用できない情報も含まれています。
DeFireでは一次情報を追って、できるだけ正しい情報をお届けしようと思うので、皆さんもニセ情報にはお気を付けください。

USTデペグ事件については今後も真相を追っていきたいと考えていますので、新しい情報が入り次第またお伝えします。

引用

サムネイル引用元:被爆「狂刷賣單狙擊 UST」!SBF 也涉及 Terra 崩盤?(區塊客)

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