dYdXの理解を深める 前編

サムネイルの引用元:dYdX

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では、分散型取引所の一角で、オーダブック方式を採用するdYdXについて解説します。分散型取引所といっても、dYdXには中央集権的な側面と分散的な側面がありUniswapやPancake Swapのそれとは区別する必要があります。本記事は、前後編とありますので、後編をご覧になる方は、こちらから参照お願いします。

またdYdXは現物を取り扱うスポット取引に注力するというより、レバレッジ取引や永久無期限先物取引といったデリバティブを中心に提供しておりBinanceやCoinbaseなどがその比較対象として適切であると考えます。前編では、dYdXが提供するサービスについて深掘りし、後編でのdYdXの特徴や仕組みなどその詳細の理解に繋げていきたいと思います。

dYdXの概要


引用元:dYdX
さてここからはdYdXの詳細について深堀していきたいと思います。dYdXは、上段で説明したようにレバレッジ取引、無期限先物取引、スポット取引など幅広いサービスを提供するトレーディングプラットフォームです。以下ではその各サービスについて詳しく解説します。

レバレッジ取引

レバレッジ取引は、dYdXだけでなく、多くの取引所で提供されているサービスではありますが、改めてその基本を理解しましょう。レバレッジ取引とは、ユーザーが自己資金以上の金額で取引を行うことを可能にする仕組みです。ユーザーは証拠金と呼ばれる一定の資産をアカウントに預け入れ、その証拠金に基づいてより大きな取引を行うことができます。これにより、少額の資金であってもより大きな取引、並びに収益を獲得することが可能となります。

dYdXでは、ETHやBTCなど主要なトークンでは最大20倍のレバレッジが、そしてその他のトークンでも5倍のレバレッジまで選択することが出来ます。レバレッジ倍率とは、証拠金に対して取引金額をどれだけ増やすかを決定するものです。例えば、10倍のレバレッジ倍率を選択した場合、証拠金の10倍までの取引が可能となります。ただし、レバレッジ取引はそのリスクも高めます。市場の変動や予測外の出来事が起こった場合、証拠金が失われる可能性もあるため、注意が必要です。仮にdYdXでETH-USDのロングポジションを保有し、1000USDCを証拠金として、レバレッジ倍率を10倍に設定したとします。

ETHの価格が2000USDCだったとして、2500USDCにその価格が上昇すれば、2500ドルの利益を手にする事ができるわけです。元々の手持ち資金である証拠金が1000ドルであったことを踏まえると2500ドルの強力さが理解できるかと思います。しかし上段で申し上げた通り、レバレッジ取引はリスクが高まる点に注意が必要です。仮にETH価格が1800USDCとなればその時点で証拠金のほぼ大半を失います。なぜなら、ETH価格が200ドル下落すれば合計で5ETHを保有している計算となるユーザーは1000USDCの損失を被ります。

したがってその証拠金要件を満たすことが出来ず、清算が発生してしまいます。もちろん上記の例は、清算が執行される際の諸々の手数料を含んでいないため、正確には、1800ドルに到達する前に清算要件を満たすこととなります。通常の現物取引では、資産額が0になるというのは文字通り、保有資産の価格が0にならなければ発生しない訳ですが、証拠金取引を利用した場合、この例ではわずかに200ドル程度、10%の価格変化で証拠金である1000ドルをほぼ全て失ってしまうのです。

ここからは、dYdXが提供している説明をもとに改めて清算の仕組みを振り返ります。仮にユーザーが1000 USDCを証拠金として、価格が2000 USDCのETHのショートポジションを保有します。この時点でユーザーのアカウントのバランスは+3000 USDC、-1ETHとなります。市場価格を反映したオラクル価格は2000USDCなので、ユーザーのレバレッジ倍率は2倍となります。その後、ETHの価格が上昇し、オラクル価格が2791 USDCに達します。この時点でユーザーのポジションは証拠金要件を下回り、清算が発生する恐れがあります。

ここで、アカウントの資産額が100 USDC、0ETHの清算人は、ユーザーのポジションを2800 USDCで清算し、その際に1%の手数料である28USDCを取ります。これにより、ユーザーのアカウントの資産額は3000 – 2800 – 28 = 172 USDCとなります。一方、清算人のアカウントの資産額は2928 USDC、-1ETHとなります。その後、清算人は市場でショートポジションを2800 USDCでクローズし、その最終的なバランスは128 USDC、0ETHとなります。つまり、ユーザーはポジションを保持するための証拠金が不足し、その結果、清算人によってそのポジションが清算されました。清算人は、ユーザーのポジションを市場で売却し、その差額と手数料を利益として得ました。

無期限先物取引

ここからは、暗号資産業界で非常にスタンダードなサービスとなっている無期限先物取引(Perpetual Futures Trading)について解説を加えます。無期限先物取引は、伝統的な先物取引とは異なり、特定の期限が設定されていないデリバティブ取引の形式です。これは、取引者がポジションを保持し続けることができ、ポジションを決済またはロールオーバーする必要がありません。無期限先物取引の特徴的な要素は「ファンディングレート」です。これは、契約の価格が基準となるスポット価格から乖離しないようにするメカニズムです。ファンディングレートは一定の間隔(通常は8時間ごと)で調整され、ロングポジションを保有するトレーダーがショートポジションを保有するトレーダーに支払う、またはその逆の支払いが行われます。

無期限先物取引は、上段でも述べたレバレッジを利用した取引が可能であるため、大きなリターンを追求するトレーダーにとって魅力的な選択肢となりますが、同時に大きなリスクも伴います。また先物取引はロングポジションとショートポジションを保有するトレーダーがある程度均衡している必要があり、その不均衡をファンディングレートで調整するわけです。

よって多くのトレーダーが同様にポジションを保有してしまうと、仮に相場の予測に成功しても、そのコストによって思いの外収益が上がらないという可能性があるのです。また多くのアルトコインは、局所的に価格が上昇することはあっても基本的に下落基調にあるため、ロングポジションを保有するトレーダーは多くありません。よって先物が上場しなかったり、上場廃止に至る場合もあります。

まとめ

ここまではdYdXで提供されているサービスついて深掘りしてきました。本記事自体ははdYdXの解説というより一般的なトレーディングサービスの仕組みについての解説に終始した感が強いですが、この点が理解出来ないとdYdX自体を利用することが出来ないため改めて解説しました。後編ではよりその詳細を深掘りします。

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