Frax Financeの理解を深める 前編

サムネイルの引用元:Frax Finance

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では部分資産担保型ステーブルコインであるFraxとFrax Financeのエコシステムについて、理解を深めます。前編の本記事では、Frax Financeの代名詞であるFraxステーブルコインとそれを支える仕組みであるAMO、LSDとしてのfrxETHなどについて詳しい解説を加えます。

部分担保型ステーブルコインFrax

ここからは部分担保型ステーブルコインであるFraxステーブルコインについて概観したいと思います。さてステーブルコインの種類には、USDC、USDTのような法定通貨担保型ステーブルコイン、DAIやLUSDのような暗号資産担保型ステーブルコイン、USTに代表されるアルゴリズム型ステーブルコインの3種類に大別することが出来ます。

今回主役となるFraxは、この暗号資産担保型ステーブルコインとアルゴリズム型ステーブルコインの間に位置するような部分担保型ステーブルコインです。Fraxステーブルコインは米ドルにペッグされたステーブルコインで担保の大半、9割以上が安全資産で構成されています。一方その残りは、Frax FinanceのガバナンストークンであるFXSによって価値が保たれているのです。この部分担保の仕組みを簡単に理解するために、以下ではまずFrax V1の解説をします。その後Frax v2の概要を踏まえて、より高度化したAMOなどについてもその理解を深めます。

Frax v1: 背景


引用元:chaindebrief
上記でも言及した通り、Frax v1においてFraxステーブルコインの担保は、USDCとFrax FinanceのガバナンストークンであるFXSによって構成されています。しかしその担保比率は、FRAX ステーブルコインの市場価格に基づいて動的に調整される仕組みとなっています。このFraxステーブルコインの安全性メカニズムのことをアルゴリズム・マーケット・オペレーション・コントローラー(以下ではAMO)と呼びます。Frax v2でAMOは多岐にわたる機能を備えますが、ここでは一旦、担保比率調整機能に焦点を当てます。そのAMOの具体的な機能として、FRAX の価格が 1 ドルを超える場合には担保比率 (CR) が低下します。一方FRAXの価格が1ドル未満の場合、CRは増加します。このCR は動的であるため、残りの価値について Frax Share トークン (FXS) を鋳造することで FRAX の償還を可能とします。たとえば、CR が 85% の場合、FRAXを償還すれば、ユーザーは、 0.85 ドルの USDC と 0.15 ドルの鋳造された FXSを受け取ります。

Frax v2: AMO


引用元:Sam Kazemian
さて、Frax v1について概観したところで、続いてはFrax v2について深堀をします。Frax Financeでは、Frax v1に関連してUSDCとFXSを担保にFraxステーブルコインが発行されていました。しかしながら、これでは担保であるUSDCは、遊休資産となります。Frax v2 では、Frax が収益を生み出しながら効率的に流動性を管理できるようにする様々な仕様が加えられています。

Lending AMO:

FRAXをAaveなどDeFiレンディングプロトコルに貸し出すことで金利収入を得ます。

Liquiduty AMO :

Uniswapなどで流動性プールにFraxを提供し、スワップ手数料を獲得します。

Invester AMO :

USDCなど担保の遊休資産を用いてCompound や Aave などのDeFiレンディングプロトコルプロトコルで利回りを得ます。

Curve AMO :

流動性とペッグの向上を目的として、FRAXとUSDCをCurveに提供します。

以上の4種類がAMOの仕様として挙げられるものですが、上記の説明だけだと、なかなか想像の及ばない点もあるかと思いますので、以下ではCurve AMO例に、その仕組みや目的などを理解します。

Curve AMO

Frax FinanceはCurveで、独自にFRAX3CRVプールを展開しています。したがってFrax Financeは、このFRAX3CRVプールに対して管理者権限を所有しています。これにより、Curve AMOは、そのプールにおける変数を自由に設定することが出来るのです。実際にFrax FinanceのガバナンストークンであるFXSホルダーに還元される手数料や今後必要となる機能を提供するための手数料を徴収しています。遊休資産であるUSDC担保とFRAXを独自のCurveプールで提供することで、収益を稼ぎながらさらに流動性を生み出し、ペッグを強化することを可能としているのです。流動性を高めるというのは、つまりプール内の流動性が低下すれば、Curve Financeといえど大幅に価格が変動する可能性があります。そのため、自らが多くの流動性を提供することで、例え多くのスワップ注文が執行されたとしても価格が変動しづらくなります。またこのことはCRの安定化にも繋がります。

Frax Financeが提供するLSD


引用元:Frax Finance
続いては少し趣向を変えて、Frax Financeが提供するLSDについて概観したいと思います。Frax Financeも独自のLSDであるfrxETHを発行しており、そのステーキング報酬の高さは、主要なLSDプロトコルで最も高くなっています。利用方法は一般的なLSDプロトコルと変わらず、ユーザーはFraxに1ETHを預けることで1frxETHを鋳造します。Frax Financeに由来するLSDは以下の2種類が存在します。

frxETH

frxETH は ETHにペッグするステーブルコインとして機能するため、1 frxETH は常に 1ETH 分の価値があります。したがって市場に流通している frxETH の量は Frax FinanceにロックされているETHの量と一致します。注意点としてfrxETH を単独で保有することはステーキング利回りの対象ではないため、ETH を保有するのと同等であると考えなければなりません。

読者の皆様はせっかく、LSDのプロトコルを利用しているのに、なぜ利回りを受け取ることが出来ないのかと思われたでしょう。もちろんfrxETHにも有用な活用方法があります。Curve FinanceでfrxETH/ETHのプールに流動性を提供することで、取引手数料とCVX、CRV、FXSの報酬を得ることができるのです。またfrxETH/ETH LPプールは、frxETHはETHにペッグするトークンであるため、事実上ILが0と仮定されるほか、Frax FinanceはCurve Financeで大きな投票力を保持しているおり、競争力のあるAPRを提示できます。

sfrxETH

さて、上記ではfrxETHの活用について解説を加えましたが、単純にLSDとして利用したというユーザーが大半でしょうから、sfrxETHについても説明します。ユーザーは、先のfrxETH をsfrxETH vaultに入金することでいつでも sfrxETH と交換でき、ステーキング利回りを得ることができます。時間の経過とともにバリデーターがステーキング利回りを獲得すると、同量の frxETH が鋳造されてvaultに追加され、ユーザーは自分の sfrxETH を入金した額よりも多い額の frxETH と引き換えることができるのです。

以上が本記事の内容となります。

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