Skip Protocolの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Skip Protocol

はじめに

本記事では主にCosmosエコシステムにおけるMEV (Maximum Extracted Value)の問題の解決に挑むSkip Protocolについて解説します。前編では、EthereumやCosmosのMEVの基礎的な事項について解説を加えました。

後編では、CosmosのMEVが今回の記事の題目でもあるSkip protocolによって、どのように対策されていくのかという点について解説します。前編でも述べたようにMEVと聞くとすぐにEthereumを想起しますが、これは全てのBlockchainで生じる、または今後生じうる可能性のある問題です。またMEVの発生原因についても、EthereumとCosmosでは大きく異なるという点は、注意すべきです。今回はそんなCosmosにおけるMEVの解決策を提供するSkip protocolについて深掘りします。

Skip Protocolの概要

Skip Protocolでは、MEVの対策としてSkip Select、Protocol Owned Builde、Protorevという3つの機能を提供しています。まずはSkip Selectについて解説を始めます。

Skip Selectとは

Skip Selectは、封印入札方式 のオークションを利用して、最も高い手数料を支払ったユーザーの取引をバリデータに送信し、ブロックの先頭に含めるものです。前編で述べたようにCosmosのMEVは、アービトラージBotをCosmosのバリデータノードと物理的に近い距離で展開し、大量の取引を送信することで、利益を得るという手法が取られています。

このため、ほとんどの取引は、ある種のスパム取引となるわけですが、Skip Selectが間に加わることで、このような取引を防ぐことができます。なぜなら、オークションで、権利を落札した取引のみがバリデータに含まれるからです。またスパム取引を防ぐことで、一般ユーザーが自らの取引をブロックに含めやすくなるという点も指摘できるでしょう。

以下ではSkip Selectの具体的な取引フローについて理解を進めます。まず、Skip Selectを使用するユーザーは、SentinelというRPCエンドポイントに取引を送信します。送信された取引は、その後オークションにかけられます。この際にこのオークション封印入札方式である点に注意が必要です。つまりそのオークション期間中、ユーザーは自らが送信した取引以外を知ることはできません。

そして、権利を落札した取引のみがバリデーターに送信されます。以上が一連の流れです。最後にオークションによって発生した収益、つまり権利の落札による収益は、Skip Selectを採用するバリデーターが得ることができます。またこの収益は、デリゲーターつまり、トークンをバリデーターにステーキングする我々一般ユーザーも恩恵に預かることができるということです。Skip Selectは、封印入札であるという点を除けば、Ethereumで採用されるMEV-Boostと極めて似通った仕組みと言えるでしょう。

Protocol Owned Builderとは


引用元:Skip Protocol
Protocol Owned Builderとは、プロトコルによって所有されたビルダーということができるわけですが、これはいわゆるIn Protocolオークションシステムということができるでしょう。先ほど紹介したSkip Selectは、SkipのRPCエンドポイントが独自に設けられており、バリデーターは自由に採用の有無を決めることができました。

しかしこのProtocol Owned Builderは、その名の通りブロックビルディングをプロトコル内部で行います。プロトコル内部で行うということが意味するのは、このProtocol Owned Builderという仕組みをチェーン全体が採用するということなのです。したがって基本的に、チェーン自体がガバナンスによってその採用を決定しない限り導入されない、やや敷居の高い仕組みであることに注意が必要です。

詳しい仕組みを以下で解説しましょう。まず各バリデータは、mempoolに対して取引を送信します。これは、AuctionTxと呼ばれているようです。その後オークションを行い、ブロックの先頭に含む取引を決定します。先ほどのSkip Selectとやや似通った仕組みではありますが、いくつか注意点を述べます。1点目はいわゆるLast look problemが存在するということです。つまり、各バリデータのmempoolを通じたオークションを行っても、ブロックを提案するバリデーターが、オークションの結果を無視して、自らの取引をブロックの先頭に挿入することが可能なのです。

またこのオークションは、封印入札ではないため、事実上レイテンシーが非常に需要な競り上げ式オークションとして機能します。ただ、チェーンは、オークションの詳細や保護する注文など柔軟に設定し、それをユーザーに強制させることができるので、特定のMEVに対して対策を講じたい場合などには、非常に便利であると考えられます。もちろん対策が講じられる範囲においてですが。

protorevとは


引用元:riley.stride
protorevは、チェーン上で発生している特定の収益機会を自動的に抽出する仕組みです。これまで裁定機会は、アービトラージャーと呼ばれる第三者によって抽出されてきました。一方Skip Protocolのprotorevは、チェーン側で、それらの機会を抽出し、将来的にユーザーに還元していきます。例えば、異なるDEX間や特定のペア同士もしくは、それ以上において、トークンに価格差が生じている場合などには、このprotorevが裁定機会を検知した場合に自らトレードを行います。

以上のように、Skip ProtocolはCosmos上で生じるMEVの問題について3つの解決策を提供しています。Cosmosで発生するMEVはEthereumで発生するそれとは、異なるということはこれまでも述べてきた通りなのですが、その対策を方法は、共通点も多いものではと考えています。例えばSkip Protocolではオークションを多用していましたが、EthereumでもCosmosでもオンチェーンのオークションを構築することは極めて難しいのです。それを証拠にProtocol Owned Builderなどはやや課題が散見される結果となりました。今後の進展が期待されます。

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