Morpho Protocolの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Morpho Protocol

はじめに

こんにちは、デフィー伍拾伍号です。本記事では、Morpho Protocolと呼ばれるP2P(peer to peer)型のレンディングプロトコルについて、解説します。まず、一般にAaveやCompoundといった大手レンディングプロトコルは、Peer to Pool型を採用しています。一方でこのMorpho ProtocoはPeer to Peer型を採用し、それを既存のレンディングプロトコル上で展開することで、より効率的に金利の利息収入を得ることができます。さて後編では、そのMorpho Protocolが新しくリリースしたMorpho Blue並びに、MetaMorphoについて詳しく解説します。Morpho Protocolは、貸出側のUXを高めるアプリケーションですが、Morpho Blueの登場はそれをより加速させることになると考えます。では、本格的に両者の理解を深める前に、AaveやCompoundといった一般的なレンディングプロトコルが抱える課題について、簡単に概観します。

レンディングプロトコルにおける課題

ここからは、AaveやCompoundなどを例にレンディングプロトコルが解決しなければならない問題を理解します。ここで取り上げるのはその一部ですが、あくまで、Morpho Blueの理解の一助とするために取り上げています。AaveやCompoundに代表される大手レンディングプロトコルはPeer to Pool型を仕組みとして採用するほか、貸出借入トークンのリスティングは、その都度のDAOのガバナンスの採決を通じて、執行されます。まずPeer to Pool型を採用する際の課題を考えます。

そもそも最も大きな利点は資金効率が向上するというものです。たとえば、WETH、WBTC、USDCの3種類のトークンを採用するレンディングにおいて、Peer to Pool型、Isolated型とを比較します。Peer to Pool型であれば、WETH、WBTC、USDCどのトークンを担保としても、WETH、WBTC、USDCを借りることが出来ます。一方、Isolated型の場合に、WETH-WBTC、WETH-USDC、WBTC-USDC…といったようにPoolが分離するため、資金効率が悪化するほか、ユーザーは特定のプールに対してエクスポジャーを持つためにリスクが高まる恐れもあります。続いてはトークンリスティングに関する課題です。

レンディングプロトコルにおいては、不良債権化のリスクを小さくするため、極めて慎重に当該のトークンを精査します。もちろんディリストも可能ではありますが、Uniswapがいかなるトークンも扱える点と比較して非常に煩雑です。実際にAaveやCompoundの借入、担保可能トークンは、WETHやWBTC、DAIなど、限られています。

Morpho Blueとは


引用元:Tom – Morpho
Morpho Blueとは先の問題に対して解決の一助となる新しいレンディングプロトコルです。また下記で解説を加えるMetaMorphoはMorpho Blueを支える重要なアーキテクチャでもあります。ではまず、Morpho Blueについて理解を深めていきます。ここまでの解説を読んでいただいた読者の方々には申し訳ないのですが、Morpho Blue自体はPermission-lessでIsolatedなレンディングVaultです。上記の図にもあるようにwstETHを担保にETHを借入、WBTCを担保にETHを借入する仕組みとなっています。

Morpho Blueの特徴を簡単に解説すると、まずAaveやCompoundのDAOと比較してMorpho DAOがPoolにおいて介在するのはLLTV(Liquidation Loan to Value)の策定やfeeの設定など、最小化されています。またMorphoのVaultにおいては、貸出、担保トークンについてERC20のトークンでさえあれば採用できるほか、オラクルや金利モデルなどVault自体の仕様を非常にフレキシブルに設定することが可能です。清算に関しては任意のアドレスがその閾値において執行することが可能です。

さて、ここまではMorpho Blueの解説をしましたが、読者の皆様はいったいこれのどこが従来のレンディングプロトコルと比較して優れているのかと疑問に感じたことと思います。以下ではこのMorpho Blueを最適化するMetaMorphoについて解説を加えます。

Meta Morphoとは


引用元:Tom – Morpho
Morpho Blueについて詳しく解説したところで、ここからはMeta Morphoの仕組みについて理解を深めていければと思います。Meta Morphoとは各Lending Valutでのユーザーの資産をリスクエキスパートと呼ばれるサードパーティが管理するVaultのことを指します。これまでのレンディングプロトコルでは、ユーザーは直接自らの資産をレンディングのプールやVaultに預け入れてきましたが、Meta Morphoでは、この間にサードパーティが介在し、より柔軟に、効率的に、そしてリスク選好に合わせたマネジメントスキームをもたらすというものです。Meta Morphoの仕組みはやや煩雑なので、役割を整理し、理解を深めます。

まずは実際に自らの資産をMeta Morpho Vaultに提供する、貸出ユーザーが存在します。そしてMeta Morpho内のアクターにはOwner、Curator、Gurdian、Allocatorの4者が存在しており、最後に実際の預け入れ先であるMorpho Blueつまり、各レンディングVaultがあります。ユーザーと各レンディングVaultの仕組みの内容は先ほど説明しましたので、割愛します。また、OwnerとGardianは重要なアクターですが、本旨とズレるためこちらも割愛します。

まずCuratorはこのMeta Morpho Vaultにおいて、Morpho Blueにおける提供先のValutを指定します。したがってMorpho BlueにおいてAaveやCompoundでは、絶対にリストされないような非常にリスクの高いVaultが存在していたとしても、このCuratorが、当該のVaultをリストしない限り、提供先となることはありません。続いて、Allocatorはユーザーからの預けられた資産をリストされているVaultにどれくらいの割合で配分するかを決定します。

Morpho ProtocolではこのMorpho BlueとMeta Morphoを併せて実装することで、先にあげた問題を解決する糸口とします。またユーザーは、独立したレンディングVaultに都度、資産を預ける必要がありません。仮にWETHを貸出しても、Morpho Protocolがその裏側で、ユーザーのリスク選好に合わせて、50%をVaultAに30%をVaultBにVaultCには、預け入れをしないというマネジメントを実行してくれます。もちろん、Meta Morphoを介在せず、直接Morpho BlueのVaultに資金を提供することも可能です。さて本記事ではMorpho ProtocolのMorpho BlueとMeta Morphoについて解説を加えました。今回は以上です。

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