秒速で借りて返す!フラッシュローンのユースケース

こんにちは!弐号です。

今日はDeFiレンディング固有の機能であるフラッシュローンの紹介と、そのユースケースの紹介をしようと思います。

フラッシュローンとは、同一のトランザクション内で借り入れと返済を同時に来なうことにより、DeFiレンディングでは通常必ず必要となる担保の提供なしに、上限金額なしに借金を行うことです。

伝統金融では借り入れの際に必ず審査が発生し、信用調査も担保もまったくなく何億円といった額を借り入れすることはできません。

しかし、DeFiレンディングにおいては、信用調査も担保も必要とせずに、フラッシュローンを利用すれば無限の金額を借金することができます。

したがってフラッシュローンは、DeFi固有の非常に強力なツールとして機能します。

(※アイキャッチ画像はWhat is a Flash Loan?より引用)

レンディングと担保

伝統金融においては、一定の信用スコアに応じて無担保や過少担保にて借り入れを行うことができます。

しかしながらDeFiでのレンディングにおいては、本人確認が行われないことから信用にもとづく担保なしでの貸出を行うことはできません。

もし、担保なしで貸出をしてしまえば、そのまま持ち逃げ(借りパク)されてしまうだけです。

そのため、DeFiレンディングではトークンの借り入れを行うためには、借り入れるトークンよりも多くの担保を提供してもらうことにより貸出を行います。

どのくらいの担保を要求するのかはレンディングプラットフォームによってまちまちですし、また担保とするトークンの流動性やボラティリティによって変動させることもありますが、一般的には2割〜10割増しの担保を要求することが多いです。

流動性が高く、またボラティリティも比較的少ないビットコインであれば、$1Mの借り入れに対して$1.2〜1.5M程度のビットコインを要求することが多いです。

担保の提供が必須となることは、KYCが存在しないDeFiレンディングにおいては必要不可欠なわけですが、一方で担保を過剰に要求するのは資金効率が悪く、またそもそも担保資産を保有していないユーザを締め出すことになり、利便性は低いと言えます。

そこで登場したのが「フラッシュローン」です。

単純に借り入れトークンをアドレスに対して払い出してしまうと、前述の通り持ち逃げリスクが発生し不可能なのですが、同一のトランザクション内で返済を行うことを条件にすれば、持ち逃げリスクは発生しませんので、担保を要求することなくいくらでも貸出を行うことができます。

同一のトランザクションですぐさま返済してしまうのでは使いみちがないのではないかと思われるかもしれませんが、同一のトランザクション内で借り入れを行った後に例えばアービトラージを行い、アービトラージによって増えた分を残して返済を行う、ということを行えば十分利用価値があります。

アービトラージにおいては、しばしば数ドルの利益のために数億円規模の資金を動かす必要があり、それだけの巨大な資金を一般の個人投資家が用意するのは難しいですが、フラッシュローンを活用することによって、元手なしでそうしたアービトラージを行うことができる、というのは伝統金融でも存在しないDeFi固有のメリットとなるでしょう。

以降では、フラッシュローンの考えうるユースケースなどを解説し、フラッシュローンについて深堀していきます。

ユースケース

アービトラージ

これはすでに述べたものではありますが、より詳しく見てみましょう。

例えばUniswapとCurveでETH/USDTという通貨ペアのプールにおいて価格差が発生し、$ETH の価格がUniswapの方がCurveよりも高い値段をつけていたとします。

すると、Curveで $ETH を買い、Uniswapで $ETH を売却することにより、この価格差の分だけさや取りを行うことができます。

このとき、Curveで $ETH を買う際に原資となる $USDT が必要になりますが、これをフラッシュローンを活用して $USDT を借り入れることにより原資なしにてアービトラージを行うというものです。

  1. フラッシュローンで $USDT を借り入れる
  2. Curveで $ETH を買う
  3. Uniswapで $ETH を売り、$USDT が借入額よりも若干増える
  4. 増えた分の $USDT を残し、借入金額を返却する

このアービトラージを行うために必要なのは、トランザクションを送信するためのトランザクション手数料のみであり、非常に少ない原資でいくらでも巨大な額を用いたアービトラージを行うことができます。

担保切り替え

多くのレンディングプラットフォームでは、複数の担保を同一のバスケットとして処理することができますが、$DAI を発行するMakerDAOなどでは担保の種類ごとにバスケットを設定する必要があります。

このとき、例えば $ETH で $DAI の借り入れを行っていたのを、$ETH を $BTC に交換し、$BTC での借り入れにスイッチしたいとします。

この場合には、いったん借り入れを行っていた $DAI を全額返済しなければいけませんが、運用に回しているなどの理由で手元に $DAI がなければこの操作は行うことができません。

しかし、フラッシュローンを利用すれば次のように $DAI が手元になくとも担保の切り替えを行うことができます。

  1. フラッシュローンで $DAI を借り入れる
  2. MakerDAO のポジションを精算し、担保の $ETH を入手する
  3. $ETH を Uniswap などで $BTC にスワップする
  4. $ETH を担保として MakerDAO で $DAI を発行する
  5. 発行した $DAI を原資としてフラッシュローンの返済を行う

借り換え

あるレンディングプラットフォームで借り入れを行っていたのを、利率や流動性の問題などの理由で別のレンディングプラットフォームに移行したい(借り換えを行いたい)という場合があります。

例えば Aave の Avalanche チェーン上で借り入れたのを、Benqi での借り入れにスイッチしたいとしましょう。

このとき、Aave に拘束されている担保を Benqi に移すためには、Aave での借り入れを返済する必要がありますが、返済すべきトークンが運用に回しているなどの理由で手元にない場合には担保の拘束を解除することができません。

しかし、次のような手続きを同一トランザクション上で実行することにより、手元に返済原資がなくとも借り換えを行うことができます。

  1. フラッシュローンでトークンを借りる
  2. Aave にて返済を行い、担保資産を出金する
  3. Benqi に担保資産を入金し、トークンを借り入れる
  4. フラッシュローンでの借り入れを返済する

Aave 上で誰かが大量に借り入れを行ったなどの理由で、借り入れ利率が大幅に上昇してしまった場合には、Benqiの利率が安ければBenqiで借り入れを行うようにスイッチしたいでしょう。

フラッシュローンがなければ、レンディングプラットフォームを切り替えるたびに借り入れ資産を確保し返済を行わないといけませんが、フラッシュローンを使えば運用に回している借り入れトークンを解体してこなくても、借り換えができるため、これは非常に便利です。

自己精算

精算閾値スレスレの借り入れポジションがあった場合には、担保資産を一部ないし全部売却し、返済に回すことで返済閾値を下げることができます。

しかし、精算閾値スレスレですと担保を一部解除することなどできませんし、まして全部解除することはできません。

そのため、フラッシュローンを用いて、借り入れトークンを先に返却してしまうことで担保資産のロックを解除することで、担保資産の売却を行い、精算閾値を下げることができます。

  1. フラッシュローンで借り入れを行う
  2. レンディングプラットフォームで一部、ないし全部の返済を行う
  3. 解除された担保を出金し、Uniswapなどで売却する
  4. 売却で得られたトークンでフラッシュローンの返済を行う。余った分はレンディングプラットフォームで追加で返済するなどする

そもそも精算閾値スレスレにならないようにポジション管理をするべきではありますが、相場の急変などにより対応が追いつかないこともあるでしょう。

そういった場合に、このようなフラッシュローンを利用した精算閾値の操作は一定の有効性を発揮するでしょう。

フラッシュローン攻撃

フラッシュローン攻撃とは、フラッシュローンを活用し、借り入れた大量のトークンを用いて市場を操作するなどしてDeFiプラットフォームをクラッキングする、DeFi特有の攻撃手法となります。

ユースケースとして推奨すべきユースケースではありませんが、フラッシュローンを用いた攻撃はしばしば行われており、そうした攻撃ベクトルが存在することは頭に止めておいたほうがよいでしょう。

フラッシュローン攻撃は、フラッシュローンを活用した攻撃手法の総称であり、一概にこれといった典型的な攻撃手法が存在するわけではないですが、例えば次の様な攻撃を考えることができます。

  1. フラッシュローンでステーブルコインを借り入れる
  2. 流動性の少ないトークンをマーケットオーダで買い上げることで価格を一時的に釣り上げる
  3. 価格を釣り上げたトークンを担保にして、過剰な金額をレンディングプラットフォームで借り入れる
  4. 不正に大量に借り入れたトークンを用いてフラッシュローンの返済を行う

内容を理解するのは少し難しいですが、トークンの価格を不正に釣り上げることにより本来借り入れることのできる額以上のトークンを不正に借り入れることで、借りパクを行っています。

そうすると、このような攻撃にあったレンディングプラットフォームは担保の少ない不良債権を抱えることになってしまいます。

これを防ぐためには、価格オラクルを特定のDeFiの価格だけを見るのではなく、ちゃんと外部市場の価格などを参照し、価格オラクルを不正に操作するのを難しくする、などの対策が考えられます。

また、流動性の少ないトークンについては、とはいえ、価格を不正に操作される可能性は否めないため、LTV (Loan To Value; 担保掛け値) を引き下げるなり、そもそもそういったトークンは担保として利用できないようにする、などの対策がレンディングプラットフォーム側に求められます。

フラッシュローンのデメリット

ここでは、フラッシュローンのデメリットと思われるものを考察していきます。

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