Instadappが開発したレンディングプロトコル、Fluidの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Instadapp

はじめに

本記事では、前編に引き続き、Instadappが新たに開発したLending ProtocolであるFluidについて、詳細な解説を行います。さて前編では、InstadappがFluidを開発するに至った経緯や、Fluidの根幹をなすLiquidity Layerの概念について簡単に解説しました。以下では、Fluid上で開発がなされる初期プロトコルのLendingProtocolやVaultProtocol、DEX Protocolについて、一つ一つその理解を深めます。

Liquidity Layer自体は、高度なアルゴリズムやロジックを持たないシンプルなコントラクトです。一方、Fluidの上に構築されるプロトコルは高度なアルゴリズムを実装する役割を担います。これにより、上記のプロトコルに脆弱性があった場合でも、影響を受けるユーザーの損失を最小限に抑えることができます。さて、下記で紹介するFluid上のLendingProtocolでは、前編で紹介したLiquidity Layerの考え方がふんだんに活用できますので、前編も合わせてご覧ください。

Fluid上のLendingProtocolとは

FluidのLendingProtocolは、AaveやCompoundといった従来のレンディングプロトコルと比較して、その貸し手と借り手のニーズに応えるシンプルかつ効率的なソリューションを提供します。まず第一に、一般的に、多くのレンディングプロトコルでは貸し手の数が借り手の数を大きく上回っています。これは、多くのユーザーが自分の資産を安全に運用し、利回りを得ることを望んでいるためです。いわゆる借りられすぎの状態は不良債権リスクを高める可能性があり、必ずしも金利が高まる貸出率の高い状況は望ましいわけではありません。

ただFluidのLendingProtocolにおいて、貸し手はLendingProtocol上に資産を預けるだけで、より長期的に安定した利回りを得ることが期待できます。というのも前編のLiquidity Layerの章で説明したように、仮に借り入れ条件が改善されても、貸し手は資産を移動させる必要がありません。一方で、借り入れ側には、順次新しい機能やメカニズムが導入されれば、借り手はより柔軟な条件で資金を調達できるようになります。これらの仕組みを支える秘密は、Ethereumの標準規格であるERC4626にあります。LendingProtocolはこのERC4626標準に準拠しています。ERC4626とは、トークン化されたボルト(Tokenized Vault)のための標準であり、ユーザーが預け入れ、引き出し、利息の取得を行うための共通のインターフェースを定義しています。

この標準に準拠することで、LendingProtocolは他のDeFiプロトコルとのシームレスな統合が可能になります。ERC4626の主な機能は、以下の4つになります。deposit(預け入れ):ユーザーが資産をボルトに預け入れるための機能、withdraw(引き出し):ユーザーが資産をボルトから引き出すための機能、mint(ミント): 預け入れに対してボルトのシェアトークンを発行するための機能、redeem(償還):ボルトのシェアトークンを資産と交換するための機能。これらの機能を標準化することで、ERC4626は異なるプロトコル間の相互運用性を高め、開発者がDeFiアプリケーションを構築するためのガス代を削減します。

Fluid上のVaultProtocolとは


引用元:instadapp blog
VaultProtocolは、資産の借り手向けに設計されたプロトコルです。資本効率の向上、高いLTV、優れたレート、最低限の清算ペナルティ、スマートデットとスマートコラテラルなどの機能を備えており、またそれらをシンプルなUXで提供します。VaultProtocolの清算メカニズムは、crvUSDやUniswapv3のデザインからヒントを得ており、既存のレンディングプロトコルと比較して100倍の改善を実現していると報告されています。具体的にまず清算に関しては、清算閾値に達するまでの必要最小限の範囲でのみ行われます。ほとんどの清算において、清算される債務の額は5%程度であり、他のプロトコルでは最大50%または100%になる可能性があります。VaultProtocolでは、ユーザーが清算された場合の損失は、他の借入プロトコルの5〜10分の1に抑えられます。

また清算ペナルティ自体も0.1%と非常に低く、他のプロトコルの5〜10%と比較して50〜100倍の節約になります。VaultProtocolの清算オラクルでは、UniswapとChainlinkを組み合わせたオラクルシステムを採用し、3つの異なる時間加重平均価格(TWAP)のチェックポイントとChainlinkの価格をチェックし、現在のUniswap価格と比較して、特定の範囲内にあり、いかなる方法でも操作されていないことを確認します。これにより、清算目的で現在のDeFi価格を使用できると同時に、操作の可能性を排除(または非常にコストがかかるようにする)できます。

Fluid上のDEXProtocolとは


引用元:X

引用元:X
DEXProtocolは、ユーザーが債務と担保を取引目的の流動性として活用できるようにする、スマートデットとスマートコラテラルを導入したプロトコルです。v1では、Uniswapv2とUniswapv3を組み合わせたようなもので、単一の自動リバランス範囲注文、Uniswapv2のようなUX、Uniswapv3のような集中流動性を備えています。v2ではUniswapv4をベースにすることが構想されています。スマートコラテラルプールは、通常のAMMプールのようなもので、ユーザーは取引手数料を稼ぎながら、同時に担保を貸し出し、それに対して借り入れを行うことができます。一方、スマートデットプールは、通常のAMMプールの逆のようなもので、借り手は債務を流動性として使用し、取引手数料を通じて債務の割引を受けることができます。

スマートデットは、債務を流動性として使用し、トレーダーがその上で取引できるようにします。スマートデットは、通常のAMMプールの逆のようなものと考えることができます。トークンを流動性として持つのではなく、債務が流動性として使用され、各取引でスワップ手数料からトークンの流動性が増加するのではなく、スワップ手数料から債務が減少します。借入金利は通常3〜5%で安定していますが、APR自体はスワップ取引の取引高に応じて日々変動します。

まとめ

Fluidは、多くのDeFiプロトコルがより資本効率の良い新しい方法で構築できる革新的な基盤レイヤーであり、分断化された流動性の長年の問題を解決し、高LTV、より良いレート、より柔軟な債務など、ユーザーにより良いユーティリティを提供するDeFiプロトコルを構築するための基盤を提供します。

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