サムネイルの引用元:Frax Finance
こんにちは、デフィー伍拾伍号です。前編に引き続き、後編の本記事ではFrax Financeのエコシステムについて、その理解を深めます。前編では、Frax Financeの代名詞であるステーブルコインFraxとそれを支える仕組みであるAMO、LSDとしてのfraxETHなどについて解説しました。後編では具体的にCPI連動型ステーブルコインであるFPIやFrax Swap、Frax Lendなど、Frax Financeのエコシステムという側面から、その詳細な機能について一つ一つ概観します。
CPI連動型ステーブルコイン
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Frax FinanceのCPI連動型ステーブルコインとは、Frax Price Index(FPI)と呼ばれ、米国の消費者物価指数(CPI)のバスケットに連動するステーブルコインです。CPIとは、消費者が購入する一般的な財やサービスの価格変動を追跡する指標であり、インフレーションやデフレーションの主要な尺度となっています。FPIは、CPIバスケットに含まれる商品の価格に対して、その価格を一定に保つことを目指しており、これにより、ステーブルコインの購買力が保たれます。つまり、CPI に含まれる財の品目の価格が上昇すれば、それに応じて FPI の価格も上昇するということです。
ここからはFPIの具体的な仕組みについて、詳しく解説します。まずFPIは、FRAXによってその価値が100%裏付けられています。ここまでは、一般的なステーブルコインの仕組みと大差ないでしょう。しかし上記でも言及したように、FPIはCPIにペッグするステーブルコインです。従ってそのインフレ率によってFPIの裏付け資産の価値が変化することに注意が必要です。例えば今年のインフレ率が2%であったとしましょう。その場合、我々は昨年まで1ドル並びに1FRAXで購入できたものを1.02ドルで購入する必要があるのです。
反対にFPIを含む財の視点から見れば、1ドルは、その財に対して98%分の価値しかないわけです。同様に先ほどの例からこれまで1FPIは1FRAXによって担保されてきましたが、インフレ率が2%の状況では、1FRAXつまり98%しか1FPIを裏付ける資産がありません。よって残りの2%はAMOを活用することで稼ぎ出すように設計されています。またインフレ率自体については、オラクルサービスであるChainlinkから12ヶ月間のインフレ率を取得し、利用しています。ただ昨今、米国を含めた世界全体のインフレ率は、非常に高い水準に留まっており、CPIにペッグするという仕組みにどこまで持続的であるかは不透明です。
ただこのFPIにはFrax Price Index Shareというガバナンストークンが存在しています。本来このFPISトークンには、プロトコルからシニョレッジ、つまり超過利回りを受け取る権利があります。しかしながらAMOによる利回りが CPI レートを下回った場合、FPIの担保比率(CR)を100%に保つために、FPISを売却する仕組みなのです。従って仕組み自体にやや不安が否めません。もちろんインフレ率が上昇すれば、それに伴い実世界の金利は上昇します。一方、AaveやCompoundなどはその金利があくまで需給に基づいて決定されるため、必ずしも実世界のインフレ率と相関するわけではありません。その場合、やはりAMOによる利回りでは充足しないというリスクはありますが、実際のところFPIには、発行上限が都度設けられているため、すぐに大変な懸念となるとは現段階では言いづらいと考えます。
さてここまではCPI連動型ステーブルコインであるFPIについて理解を深めてきました。このCPI連動型ステーブルコインは、現況のようにインフレが高い時期には非常に有用でしょう。USDCやUSDT含め、通常の法定通貨はインフレによって時間とともに価値が減少してしまいます。しかしFPIは、財に対してその価値を一定に保つため、購買力の保全を期待することができるのです。
Frax Swapとは
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Frax SwapはUniswap V2もベースに構築された分散型取引所、AMMであり、大口の注文を執行するのに適した時間加重平均市場メーカー(TWAMM)が組み込まれています。TWAMMとは、暗号資産ファンドであるParadigmによって提案された仕組みで、大きな金額の注文を長期間にわたる注文を無数に小さなサブ注文に分割し、それらを一定の時間間隔で執行します。これにより市場へ価格影響を最小限に抑えることができます。たとえば、次の2,000ブロックで100 ETHを売るという注文があるとします。
TWAMMはこの注文を2,000ブロック間で均等に分割し、各ブロックで0.05 ETHを売るという形で注文を執行します。これらのサブ注文は非常に小さいため、それぞれが市場価格に与える影響はほぼ無視できます。下記のFrax Lendの説明でも言及しますが、Frax Financeがこれだけ様々な機能を実装するには、その特長であるAMOが関連してきます。Frax Swapに関連するAMOの一例として、FXSの買い戻しとバーン、価格ペッグを安定させるための FRAX ステーブルコインの買い戻しとバーンなどがありますが、どちらも取引としての非常に規模が大きく、注文の執行に際して柔軟な設計が求められるものなのです。
Frax Lendとは
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Frax LendもFrax Financeの機能の一部で、仕組み自体は一般的なレンディングプラットフォームと変わりません。しかしながら基本的にステーブルコインのFRAXしか借りれないことに注意が必要です。受入担保は、他のレンディングプロジェクトと大差なく、WETHやUNI、CRVなどです。もちろんこれだけを切り取って考えると奇妙かつ若干使いづらいレンディングにうつるかもしれません。
しかしFraxエコシステムにおけるFrax Lendという側面からFrax Lendを考えるとその印象が変わるかもしれません。というのも仮にFrax FinanceにおいてFRAXが発行されても、それが過剰担保化される借り手を通じてマネーマーケットに流通しない限り、流通しているとは言えません。もっと簡単に言えば、ステーブルコインはきちんと他のプロジェクトで用いられなければ意味がありません。しかしFrax Lendを実装することで、AMOは直接の担保比率(CR)を下げることなく、FRAXを直接貸し出し、既存のマネーマーケットから借り手から利息を得ることが可能になります。貸し出しから得られる利回りははFXSを買い戻し、バーンするために使用されます。
まとめ
さて本記事ではFraxとFrax Financeのエコシステムについて解説してきました。Frax Finanaceはこれ以外にもCurve Warに関する立ち回りなど、解説すべき点が様々あります。Frax Financeは一見すると、他のプロダクトの良い点をただひたすら実装するだけのように見えますが、その戦略含め非常に巧みなものがあり、DeFi全体のエコシステムを理解する上でも非常に重要なプロジェクトであることは間違いありません。本記事の内容は以上になります。