Unichainの理解を深める 後編

サムネイルの引用元:Unichain

はじめに

2024年10月、最大手DEXのUniswap labsから動きがありました。Unichainの発表です。これは、MEVのコントロールとクロスチェーンの流動性効率化という、DeFiが長年直面してきた二つの本質的な課題に対する包括的なソリューションを目指しています。

Unichainの特徴的な点は、TEEを活用した検証可能なブロック構築メカニズムと、Flashbotsとの協力で開発されたRollup-Boostにあります。特にFlashblocksと呼ばれる革新的なブロック生成システムは、250ミリ秒という高速なブロックタイムを実現し、従来のL2ソリューションと比較して大幅な性能向上を図っています。

また、Unichain Validation Network(UVN)の導入により、従来のシングルシーケンサーアーキテクチャに関連するリスクに対処し、クロスチェーン取引の迅速な決済を可能にします。これは、DeFiにおける流動性の分断という長年の課題に対する重要なソリューションとなる可能性を秘めています。

さらに注目すべきは、UnichainがMEVに対して二つのアプローチを採用している点です。一つはブロックタイム短縮によるMEV最小化、もう一つはpriority fee orderingを通じたMEVの再分配です。この二つのアプローチにより、MEVの問題に対してより包括的な解決策を提供することを目指しています。

本稿では、これらUnichainの技術的特徴を詳細に分析し、DeFiエコシステムに与える影響について考察します。

技術的実装の革新性


引用元:100y.eth

さて、ここからは少し詳しく技術的実装の部分にも解説を加えたいと思います。UnichainのFlashblocksシステムは、State Root Generationの最適化という重要な技術的革新を含んでいます。従来のロールアップでは、各ブロックごとに完全なState Rootの計算が必要でしたが、Flashblocksでは複数のブロックでこの処理を共有することが可能です。これにより、Computational Overheadを大幅に削減することができます。

また、Trustless Revert Protectionも重要な特徴です。これは、TEEがトランザクションをシミュレートし、Revertされる可能性のあるトランザクションを事前に検出して除外する機能です。この機能により、ユーザーは、Failed Transaction Feeの問題を軽減することができます。一般的にEthereumでは取引を実行するためにガス代を支払う必要がありますが、このガス代は取引の成功の可否に関わらずその実行に対して必要となるので、取引が失敗してもガス代は消費されてしまう問題があるのです。さらに、UnichainはEncrypted Mempoolの実装も計画しています。これは、トランザクションのPrivacy Preservationを強化する機能で、Front-running Resistanceを向上させる効果が期待されます。

DeFiエコシステムへの影響


引用元:100y.eth
Unichainの導入がDeFiエコシステムにもたらす最も重要な影響の一つは、Price Impact(価格インパクト)の低減です。Price Impactとは、大口取引が市場価格に与える影響を指し、Slippage(スリッページ)の主な要因となります。250ミリ秒という短いブロックタイムにより、このPrice Impactを大幅に削減することが期待されます。また、UnichainはTime-Weighted Average Price(TWAP)オラクルの精度向上にも期待されます。TWAPは、一定期間の平均価格を計算するメカニズムですが、従来のブロックチェーンでは粒度の粗い時間間隔でしか計算できませんでした。Flashblocksによる高頻度な価格更新により、より正確なTWAPの計算が可能になります。

また、Unichainは独自のLiquidity Fragmentation対策も導入しています。これは、将来的にCross-chain Atomic Swapsを可能にする機能で、異なるチェーン間での資産移動をより効率的にします。Unichain自体の登場も含めて現在EthereumのLayer2は乱立傾向にあります。またUniswapが独自のチェーンを発表したことで、そのほかの大手Dappsも独自チェーンを開発する流れとなるかもしれません。AaveやLidoが独自チェーンを構築する可能性を十分に考えられます。特にこれまでEthereumに多額のガス代を支払ってきたDappsは、独自チェーンへの移行することで、sequencing feeという形で丸ごと獲得できるわけですから、Layer2を構築する理由は十分です。ただ一方、チェーンが増えれば増えるほど、各チェーンがそれぞれ流動性を保持する必要があり、流動性の断片化はさらなる問題となります。もちろんチェーン同士が競争することよる仕組みの向上が期待できないわけではありません。基本的に従来のBridge Protocolでは、Cross-chain Latencyが大きな課題となっていましたが、UVNによる高速な確定性により、この問題を大幅に改善することができます。さらに、Unichainは革新的なStake Aggregationメカニズムを導入します。これは、バリデーターのStake-weightに基づいて、検証の優先度を決定する仕組みです。このメカニズムにより、Active Set(アクティブセット:実際に検証を行うバリデーターのグループ)の効率的な管理が可能になります。

今後の展望と課題

UnichainはSequencer Decentralizationという重要な課題にも取り組んでいます。現在のOP Stackベースのチェーンでは、Single Sequencer Architectureが採用されていますが、これはCentralization Riskを伴います。Unichainは、Decentralized Sequencingへの段階的な移行を計画しています。

Rollup-Boostと呼ばれる新しい技術も注目に値します。これは、Permissionless Proving(を実現するための技術で、Stage 2 Rollupへの移行を促進します。Stage 2 Rollupとは、完全に分散化された証明メカニズムを持つロールアップを指し、これはRollup Securityの重要なマイルストーンとなります。

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